『予感』 「おはよう、ナルト。もう六時だよ」 「うーあと五分……」 同居してからサイは、すっかりナルトの目覚まし時計代わりになっていた。 なぜ二人が同居を始めたかというと、その理由はとかくシンプルなものだった。 戦争が終わっても未だ復興途中の木ノ葉の里では、住居だけでなく家財道具や生活用品の不足など、以前のような生活を送るにはまだまだ時間が必要だった。 老人や子供のいる非戦闘員家族が最優先……と優先順位をつけていくと、ナルトやサイのような一人暮らしの若い忍への支援は一番後回しになる。 それでナルトはつい「そんじゃあオレはサイと同居でいいってばよ。な?」などと言ってしまい、今に至っている。 後になって寝具すら一組しかないと分かり引き攣ったのだが、サイが遠慮して「布団はナルトが使っていいよ。ボクは寝袋で十分だよ」なんて言うものだから、勢いでつい─── 「バカサイ!二人で一緒の布団に寝ればいいだろうが!」 そんなおぞましいことを叫んでしまったが、全ては後の祭り。 寝相の悪さを気にしていたのは最初の数日だけ、あとはもうなし崩しだ。 目が覚めたらサイに抱きついて寝ていたりして、寝ぼけた頭が一気に覚醒したこともある。 恐ろしいことにそれすらも慣れてくると、いつの間にか毎朝サイに起こしてもらうという構図が出来上がった。 「はい五分経ったよ、起きてナルト」 「もう五分だけ……頼むってば……」 そして布団を剥がされ枕を奪われ、最後はパジャマを脱がされるのだ。 「こんなんだからさー、サイのせいで風邪気味だってばよ!」 鼻を啜りながら愚痴を零すナルトに、シカマルとチョウジは無言だったが、キバは赤丸の頭を撫でながら。 「なんだ、お前ら同居じゃなくて同棲みてーだな。なあ赤丸」 遠慮のない言葉に二人は聞こえないフリに徹したが、当のナルトは、誰が見ても分かるくらい熟れた顔をしていた。 「おかえりナルト。顔赤いよ、どうしたの?」 ナルトの額に手のひらを当て、ちょっと熱っぽいねと目を細めた。 この熱はお前のせいだってばよ! 感情が答えを出す前に、熱や動悸、身体が正直に反応している。 キッカケは他愛も無い筈の同居が、ホントに同棲になる そんな予感がした─── サイト80000hit企画のキリ番用小話①に若干加筆修正をしました。 「仲間」から変化していくサイナルが好きです。 このあと意識し合っていくウレシハズカシな二人がとても可愛いと思います^^ |
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