よく道に迷う少女がいた。
少女はその日も道に迷っていた。
おぼつかない足取りで、少女にしか見えない世界を見ていた少女は、見つける。
これから宝物になる物を見つける。
親友を見つける。
親友は、全身が真黒で、ぺらぺらで、少女には少し大きすぎた。
「や、羽都」
黒コートはそう、自分の中にいる少女に声をかけた。
黒コートを着た少女は、黒コートの名前を聞く。
「俺の名前はレオポルト・イストルス・シュヴァルツヴァルト」
「おぼえられないよ」
レトルトって呼ぶね、と少女は言った。
そんな安っぽい名前にするな黒コートは文句を言ったが、少女は聞かなかった。
少女は今日も、黒コートを着ている。
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