05. お菓子 ② 


アスランが格納庫から出てキラの元に向かっている頃、
その様子を他のメンバーは自分たちの愛機の中から見つめていた。
彼らもまた、アスランと同じように自身の機体のメンテナンスを行っていたのだ。
本来、ミゲルとラスティを除くメンバー紅服3人はヴェサリウス所属ではなく、ガモフである。
しかし、ミーティングがメンテナンスの前に行われたため、彼らはそのままヴェサリウスに在留していた。

「・・・アスラン? もう、終わったんですかね?」
《あいつ、あのお嬢ちゃんがこの船に乗った時からこんな感じだぜ?》
《そうそう。 だが、性能的には前より格段に上がったって、整備のやつらは言っているがな》
《詐欺だよなぁ。
そりゃ、OSを一から自分で組み立てているからって言っても、戦闘中にバグが見つかったら洒落にならんだろ》
「・・・彼のプログラミングは、僕でさえ追いつけませんから。
・・・定期的に見ていますから、早々にバグなんか見つかりませんよ」
回線をオープンにしながらニコルは手を止めることなく、速い速度でのタイピングをしてゆく。
目の前にあるモニターには流れるようにプログラムがスクロールされており、常人の目ではついて行けない。
彼の言葉に答えたのは、アスランの行動に慣れているミゲルとラスティであった。
他の2人にも会話は聞こえているが、黙々とメンテナンスを進めている。
ラスティは溜息を吐きながら整備士たちのボヤキを告げ、呆れたように肩をすくめた。
すべてのプログラムを見終わったニコルはすべての電源を落とすと、
愛機であるGAT-X207『BLITZ』から無重力の慣性を利用しながら外に出る。
ほぼ同時に残りの機体からもそれぞれのパイロットたちが降り、自然と一箇所に集まった。

「・・・おい、やつは何処に行ったんだ?」
「アスランですか? あぁ・・・今の時間なら、食堂ではないでしょうか」
「・・・食堂・・・ですか? お昼にしては、遅すぎますよね」
「違いますよ。 この船で保護している少女、『キラ』嬢にお菓子を作っているんですよ」

イザークは近くにいた整備士を捕まえ、アスランの行き先を聞いた。
そんなイザークの言葉に首を傾げながらも整備士は、最近日常と化した彼の行動を伝える。

「アスランが、お菓子を!? ・・・僕たちも行って見ませんか? 食堂へ」
「・・・暇だからな。 あいつがお菓子作りをしている姿は想像できないが・・・・・」

整備士の言葉に驚いたニコルは、何かを考えるそぶりを見せながら提案した。
そんな彼の提案にミゲルが賛同し、結果全員が食堂に行くことが決定した。



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