THANKS FOR CLAP!  
   







「ねぇねぇ、毛利君てさ、2-Bの伊達君と長曾我部君と仲良いよね?」

顔も名前も分からないような、おそらく同じクラスの女子なのであろう…から、ことあるごとにこういう類の質問を受けることが数多くあった。
特に気にしたこともなかったのだが、どうやらあの二人は女子生徒の間で妙に人気があるようである。
聞いたところによると、伊達は正統派な美形だそうで、長曾我部に関しては優しくてチョイ悪なところがいいのだそうだ。
まぁ確かに、地毛なのか染めたのかは知らないが、少し癖っ毛のある銀髪はかなり珍しいかもしれない。しかも瞳の色は深い海のような透きとおった青い色をしている。
二人とも訳あってか眼帯を着用しているところも、女子の間では謎が多くてより一層興味をそそられるらしい。

(…我には理解出来ぬ…)

紹介して欲しいんだけどなーという女子の声をやんわりと制して席を立つ。
自ら面倒事に巻き込まれるのはご免被りたいところだ。
それに、仲が良いのかと問われると、必ずしも“そうだ”と断言出来るものでもないように思う。

ただ同じ寮生だから。

帰る方向が一緒だから。

たまたま親同士が仲が良かっただけ。

『元親君?…この子元就って言うのよ。良かったら仲良くしてあげてね?』

たまたま歳が同じだっただけ。

『せっかく同い年なら、一緒の学校に行けるといいわね』

人との馴れ合いを好まぬ己に対して、唯一物怖じすることなく話し掛けてきた相手――それが長曾我部だった。

(面倒見が良いのか、ただの物好きか…)

幼い頃からの腐れ縁で親に頼まれたから仕方なく、だから迎えにくるのだとそう思っている。
毎日毎日欠かすことなく、よく飽きぬものだと感心しながらも。
そんな事を頭の隅で考えながら、危機を察知したのか今日に限っては姿を見せない長曾我部のクラス2-Bへとゆっくりと足を向けた。









後ろのドアから教室を覗けば、何やら机に突っ伏したままの長曾我部の姿が目に入る。
前に座っている伊達が己に気が付いたようで、にんまりと悪戯っ子のような笑いを浮かべながらコイコイと手招きしている。

(なんぞ…)

「sorry!この後どっか寄ってくか?…カワイソウな元親クンに奢ってやるぜ?」

いまだ机とお友達になったままの長曾我部にそう話し掛けているのが聞こえて、ああ、なんだ。今日は伊達と帰るのか。と、長曾我部のすぐ後ろまで進めていた歩みをくるりと踵を返して背を向ける。

「…なんか裏がありそうだから遠慮しとく…」
「Ah?ひでぇな……なぁ、元就サン?」

そのまま立ち去ろうとしていたところをタイミング良く呼び止められて、忌々しげに視線を移す。

「…一体何の話ぞ」

先程から全く見えない話の流れに怪訝そうに眉間に皺を寄せて伊達を睨み返した。
大抵の人間はこれで軽く一蹴されてくれるのだが、何故だか長曾我部が“俺のダチだから”と我の前に連れてくる輩は、伊達や前田を始め、どんなに冷たくあしらっても一切動じなかった。
普通ならばとうに愛想を尽かして離れていってもおかしくないだろうに。
慣れ合う事を許した覚えはないが、気付けばいつの間にか大人数で昼食を摂ることにもすっかり慣れてしまっていた。

「毛利わりぃ、HR終わってんの気がつかなくて…」

勢いよく立ち上がった長曾我部が心底申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせながら頭を下げる。男がそう簡単に頭を下げるものではないわ、と思いつつ小さく嘆息した。

「構わぬ、姿が見えぬから何ぞあったのかと思うて来てみたが……伊達と寄り道して帰るのなら、我は先に帰っておるぞ?」

別に怒っているわけではないというのが分かったのか、癖のある銀髪がさも嬉しそうにパァっと無邪気な笑顔に変わる。
根が真面目なのだろうか。そうまでして己の機嫌を取らなくてもいいだろうに。
どうせただの腐れ縁なのだから。

「いやいやいや、寄り道しないで帰ります!…じゃーな、政宗!」










「長曾我部先輩さよーなら!」

校舎から校門までの道のりで、すれ違い様に下級生だろうか、きゃっきゃっと楽しそうに数人で挨拶しては走り去っていく。

「おう!お前らも気をつけて帰れよー」

その言葉に何の気なしに律儀にも挨拶を返す。横顔を見上げながらふと聞いてみた。

「…知り合いか?」
「んや、知らねぇ」
「………」

長曾我部は基本優しいのだ。それはきっと己だけではなく、皆に対して平等に誰にでも優しいのだろう。
今こうして横に並んで歩いているのもきっと誰にでも同じ様にしていることで。
そもそも何故ここまで己のことを気にかけるのかが分からない。

(…幼馴染だから……親に、頼まれたから?)

行き当たる答えに、何か胸の内に渦を巻いているような複雑で嫌な気持ちになる。

「…毛利、何か怒ってる?」
「……なにゆえ」
「ここ、眉間に皺寄ってる」

チョンチョンと人差し指で己の額を指差しながら案に我の顔が渋い表情をしているのだと示唆する。
良く気付くものだ…と感心してしまう。
ただ、“綺麗な顔が台無し”という台詞にはいまいち納得がいかないが。

(それは女子に対する賛辞の言葉であろうが…)

「ハーゲンダッツでも寄って帰る?」
「……貴様、先程寄り道はしないで帰ると申さなんだか」
「毛利とだったら話は別だろ?!」

縋りつくような切羽詰まった長曾我部の迫力にそういうものなのかと、訳も分からずに納得してしまう。

「…もちろん俺の奢りでさ!…イチゴ?バニラ?…何がいい?クッキー&クリームも捨てがたいよなぁ…何が食いたい?毛利?」

一生懸命我の好む味を羅列しようとしているその姿は何処か必死に見えて、その様子に思わず口元が綻んでしまった。

「…?!」

まるで大型犬が尻尾を振ってじゃれついてくるかの様な一生懸命な姿は、見ていて悪い気はしない。
己の仕草一つでぱっと嬉しそうな表情へと変わる。

(やれ…)

仕方がないからもうしばらくはこうして二人で帰るのもいいかもしれないと思ってしまった。

(別に怒っているわけではないのだが…)

それをわざわざ伝えてやるのも何やら悔しい気がするので、左隣の車道側を歩く長曾我部を見上げながら、ひとこと呟く。



「……全部ぞ?」
















拍手ありがとうございます(*ノノ
今回は毛利さん視点で書いてみますた。東西アニキが普通に学校にいたらえれーモテそうだなと思いまして…
何だかんだ言ってお互い両想いで気付いてないの本人達だけっていう…n番煎じにも程がある…ベタですみませんorz
でも両片思い、良いですよね~知らずに伊達さんにも嫉妬してる毛利さんとか書いてて楽しかったです笑
またのんびり書き続けていきたいと思いますっありがとうございました~
  skin by spica  
   






なにか一言あればどうぞ!(・∀・) お返事はMEMOにて。ありがとうございますっっ
あと1000文字。