多謝

ありがとうございました!

「雨に歌えば」

参考書からふと顔を上げると、いつの間にか部屋の中が大分暗くなっているのに気が付いた。
「光流、電気つけろ」
「ん〜」
だらだらとマンガ雑誌を読んでいた同居人に声を掛け、忍はカーテンを引こうと窓際に立つ。少し空けておいた窓の隙間から水の気配が立ち上ってきた。
「雨が降ってるな…」
「あ〜長いよな。もうふ、いや三日?か。いい加減やんで欲しいよなー」
さっさと電気をつけて、またマンガに熱中している光流は忍の独り言に適当に反応する。だらけきった光流の様子を一瞥し、忍は詩を読むような調子で言葉を舌に乗せた。
「雨が落ちているな」
「はあ?なに言ってんの、お前」
「いや別に」
素っ気無く返し、忍は再び参考書に向き合った。


天上からの雫が地面を濡らすのは時が流れているから。決して止まらないから。
どれだけ望んだって、この愛おしい場所に居られる時間は尽きていくしかない。
だからせめて、深く深く愛せるように。
心の中の、一番柔らかい場所にずっと閉まっておけるように。


「せんぱーいテレビ見せてーっ」
「瞬、ノックしろってば!…お邪魔します」
「お〜入れ入れ。貢物は?」
「コーラ持ってきた!忍先輩勉強中?一緒に飲まない?」
「ああ、もらおうかな」


ああ。ずっとここに居られたらいいのに。
宝石よりも輝く日常。


忍は将来緑林寮と緑都学園に多額の寄付をするに違いない。

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