「見てください!素晴らしいでしょう?」

「…光秀様…あの、それは一体…」

障子をすぱんと勢いよく開けて室内に入って来た光秀様の両手には、どう見ても鎌とは思えない代物が握られていました。

「これでより一層戦場を愉しめると言うものです…ククク……」

この方が人の話をあまり聞いてくれないのはもう慣れっこで。

一人悦に入る光秀様を見ながらそろそろ武器を片付けて貰おうと口を開いた瞬間、鎌とは思えないそれらが私の座っている両脇にざっくりと刺さった(この時畳が駄目になってしまったと思う辺り私も相当感覚が麻痺していると思う)

「み、光秀様…?」

「……しそうですね」

「…え?」

俯き加減で呟かれた言葉を聞き取れずに聞き返すと、光秀様はしゃがみ込んで私の顔を覗き込むようにした。

「……やはり貴女は美味しそうです」

「わ、私がですか?」

どこかうっとりとしたような表情と声色で囁かれ、背筋がぞくりとする(これは生命への警鐘か、はたまた別の警鐘が鳴っているのだろうか)


「…少し、味見をしてみましょうか」

光秀様の舌なめずりは、密やかな晩餐会の始まりの合図だった。



(美味礼賛入手記念拍手お礼文)




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