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 物語の横の小噺をお礼の代わりに添えて。
 三途河の婆のおはなし。



死と生






 それらが何であるか、私には解りませんでした。
 私はただ、それらが見につけている色んな手触りの皮を剥ぐだけです。それが私の使命です。
 ふわふわしたもの、ざらざらしたもの、つるつるしたもの、それらが身に着けている服と呼ばれるそれを、全て剥いで川に流します。それらがどうなるかは知ったことではありません。私はただ使命をこなせればいいのですから。
 それらはまるで興味関心を一切なくし、ただ川を渡るためだけに存在している、まるで私のような存在でした。虚ろで、何も思想を持たず、ただ使命を果たそうとする。川に渡るためだけに、そこに存在していました。
 しかし私はそれらの服を剥ぐだけの存在。虚ろで何一つ思想を持たず、ただ使命を果たそうとする……それらと同等の、存在。
 何一つ思想を持たないというのに、私は私の中でそれらが何なのか疑問に思う心があると気付きました。またそれは「あのひと」にも伝わったようでした。「あのひと」に解らないことなどありません。
 「あのひと」は教えてくれました。使命を与えてくださった「あのひと」は教えてくれました。
 ――それらは死者であると。
 けれど私は死者などという言葉など知らず、首を傾げました。んが? という声が私のしわしわの口(らしきもの)から毀れます。
 「あのひと」は続けました。
「あちらの世で命を終えた人たちだ、使命を亡くしてしまった人たちだよ。此岸から離れ、彼岸に逝くことだけが使命の人たちだよ」
 よく解りませんでした。しかしよく解りました。
 どちらにしろ、それらには私のようにたった一つの目的しか持たない存在なのです。私と同等の存在なのです。
 私は哀れむことも共感することもせず、ただ淡々とそれらが身につけている皮を剥ぎます。
 ああ、今日も川に皮が流れています。



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