*ギアスSS 2種*








幼い頃、ナナリーが風邪をひいて寝込んでしまったときの
ことだった。


愛想の悪い兄のことはとても苦手だったけれど。
彼女は優しくて、可愛らしくて。
本当の妹ができたようでとても嬉しかった覚えがある。
そんな彼女が熱を出したと聞いて、不安で、心配で。
いてもたってもいられなくなって。
彼女が好きだといっていた小さな花を摘んで、僕はあの日、
彼らの元へ走っていた。

息を切らしながら近づき、扉を叩くと、出てきたのは不機
嫌な、少しやつれた彼女の兄だった。
声も出さずに視線だけで非難してくる彼に怒りを覚えたけ
れど。
中から微かに聞こえてくるあがった息遣いに騒いでは駄目
だと自分に言い聞かせて彼に対峙する。


「これ、ナナリーに」


半ば押し付けるようにそれを彼に手渡せば、不思議な色を
したその瞳が大きく見開かれていく。初めて見せた年相応
なその姿に、なんだか気恥ずかしくなって。


「早く…治ればいい、な」


目線を逸らしながらそう告げれば、彼は初めて。
小さく、小さく笑った。






今思えば、そんな些細な出来事だったけれど。
あの日、あの時、僕は。

きっと、もう彼に囚われていたんだ。













ありがとうございました。









ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。