「ラビ」

誕生日だとお前は笑った。知らないと俺は言うけどお前はいいよと笑った

「おめでとう」


+誰も知らない誕生日+


「8月10日か……」

暑くてたまらない。不快な湿度に温度。空を見上げれば見渡す限りの快晴

「今日は………」

横で眠る奴が目を覚ます。酷い寝癖に寝る時間が少なかったのかクマが出来ている

「今日は早く起きろよ」

「…朝か……」

俺を無視するかのように窓辺に向かい空を見る。そして辛そうに欠伸をした

「…食堂行くか……」

寝起きのまま廊下を歩けばたくさんの人間から挨拶を受ける。適当に流しながら食堂へ辿り着く

「眠いさ…」

「寝ないからだろ。進化ねぇな」

欠伸を繰り返しながらラビは俺と視線を合わせないようにどこかを見る。喧嘩はしていない。けど会話もしていない

「……何か食わねぇと」

「何か食えよ。お前最近食ってねぇしな」

俺が何をしても何も言ってこない。気にならないのかと思えば少し嫌になる

「ラビ」

「あ、コムイ……」

無言の空気を切り裂いたのはコムイ。笑顔を浮かべて隣に座る

「元気?」

「まぁまぁ…」

目が合うとコムイはにっこり笑って頷く。そしてラビの肩を叩いた

「…元気出してとかは言わないけど、今日ぐらいは…ね?彼もそう思ってるはずだよ」

「……そんなん…無理に決まってるさ…だって今日は今日は……」

大粒の涙が机を濡らす。何故苦しめるのか理解出来なくてラビの肩に触れたままコムイを睨んだ

「…止めろ、ラビを苦しめるな」

「そう…君が苦しむほど…彼も苦しむよ?」

悲しそうな目をしてコムイは机を離れた。残されたラビと俺はまた静かに向き合う

「…ラビ……」

頬に触れても感覚は無い。今日は悲しませたくなかったのに。笑顔を見たかったのに

「…ごめんな」

抱き締めても伝わらない感覚。あんなに抱き合ったのに…鬱陶しいほど抱き着いてきたのに忘れるなんて

黙ったラビは顔を上げて涙を拭く。また合わなくなった視線を追って俺は目を見る

「なぁ…誕生日おめでとうラビ…「ラビ」

重なった声に振り向けば白髪の男が心配そうに見つめる

「誕生日なら笑ったほうがいいですよ?」

ラビは首を振って自嘲するかのように笑う。俺のほうを向いてただ

「ユウが死んだ日なんて嬉しくないさ……」

透ける身体が、疎ましいと感じる俺とまたラビが視線が合う

END

ラビュ



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