アスラン×カガリ




「カガリ」

「何だ?……っ!!」



その時もまた、不意打ちで。





− My emotions overpowered me. −





「だから!いつも言ってるだろう?!突然するのは止めろって!」



この台詞も一体何度吐いた事か。

そう考えながらカガリは、目の前にいるアスランを睨みながら怒鳴った。

対するアスランは、表面は困りつつも反省する気のないように感じられる。

それに気づいているカガリは、余計に頭に血が上り顔を赤くさせる。

――だが、それはただ"怒り"の所為だけではなかった。





先ほど昨日から行われ長引いた閣議がやっと終わり、アスハ家の私有地である庭で、

アスランと一緒に歩きながら、閣議で滅入っていた気持ちを和らげていた。

少し閣議の話やお互いに共通する友人やその家の話をしながら、花の良い香りと

例え夜でも目に映える鮮やかな景色を堪能し、また、二人だけの空間に安心していた。

誰かに会ったり、公の場へ出ればすぐに"代表首相"と"ボディーガード"だ。

こうして、親から名を与えられただ一人の人間としてのカガリとアスラン、

として外を歩き回る事は、とある場所以外では無理な事であった。

だから、二人にとって今の時間はとても貴重で、また、いつ崩れるかわからない時間だった。

少しでもこの時間があれば…と、すっかり暗くなった空を見上げながらカガリは思う。

確かに今は夜で、外を出歩く者も少ないが。またいつ何が起こるかわからない情勢なので

いつ―――と考えると、自然と顔も緊張する。



「カガリ?」



その声で考えていた事を止め、はっとした様子で自分を呼んだ相手を見た。

相手は心配そうに自分の顔を伺っていた。



「なんでもない。ちょっと考え事をしていただけだ」



そう言ったが、相手の顔が一向に晴れないのを見て、今度は少し怒り気味に言葉に出す。



「本当に何でもないんだ。だからそんな顔をするな。私はお前みたいに、ハツカネズミにはならんぞ」



口に出したは良いが、実はすでにハツカネズミ状態になっているのでは、と思う。

だがそんな事を相手には感づかれたくないし言いたくもない。それに、今それを言うと

折角言った効力がなくなってしまう。だからここはあえて黙っておく。

そう考えていると、今度は苦笑い気味に相手は笑って私を軽く抱きしめた。

突然の相手の行動に、私は一瞬身体が緊張した。



「少しは、俺に頼ってくれたって良いんだ」



頼っている―――頼っているぞ?今、こうして二人だけで庭に出て心和ませているだけでも、

私はお前を頼っている。さっき私が話していたことだって、言葉に出して誰かに聞いて貰うだけでも

自分にとってはとてもありがたいし、お前に甘えてる所だってあるんだぞ?

数秒でその言葉が頭の中に思い浮かぶが、今の状態により上手く言葉に出せず、

口をぱくぱくと動かしていた。そして心なしか、顔が熱くなってきた。

―――その時はそう、それだけの事であったし、周りには誰もいなかったのでまだ良かった。



外も寒くなってきたし、そろそろ邸に戻ろうか。と私は慌てながらアスランに言った。

アスランは「あ、あぁ」と、私と同じく少し戸惑いながら応答に答えた。

その態度に、私は安心して溜息を吐いた―――――が。



「カガリ」

「何だ?」



突然呼ばれて、私がもう一度アスランの方を向いた途端、目の前が暗くなった。

―――アスランの顔が、すぐ間近にあった。





「確かに…今は夜だし、周りに誰もいないかもしれないが!アスハ家の私有地である庭かもしれないが!」

カガリは怒りに任せて色々と言葉に出す。

「だからといって、いつ何処で誰かが見ている可能性だってあるだろ?!なのになんでいつも

当たり前のように突然…その…あ、あんな事するんだよ!」

途中で頬を赤くして言葉を濁らせながらアスランにカガリは問う。

それがカガリの照れ隠しでもあり、本心でもある事にも気づいているアスランだが、

珍しく言いづらそうに視線をカガリから少し外して困っていた。

言ってもなかなか返事がこないアスランに、カガリは業を煮やして後ろを向いた。



「もう良い!今日はこのまま寝るっ!」

「ちょ…カガリ待て」

「待・た・な・い」

「待たないって…良いから待て、ちゃんと話すから」



相変わらず子供っぽい態度をするカガリに少し笑みを零しながら、アスランは引き止める。

"ちゃんと話す"という言葉にカガリは足をとめるが、顔をアスランの方に向けようとはしない。



「その…突然してお前にしてしまうのは――――…」



最後の方がぼそぼそっと小さく呟かれたので、カガリには聞こえなかった。



「小さくて聞こえない」

「だから―――――――衝動が、抑え切れない、んだよ…」

「―――――――――はぁ?」



アスランが言いづらそうに言った言葉に疑問を持ち、カガリは思わずアスランに顔を向けた。



「衝動が抑えきれないってお前…そんな事あるかよ!」

「あるんだよ。お前が気づいていないだけで…俺は、お前が思っている程抑えが利く奴じゃない。

久々に二人っきりになったんだ。もう少しカガリとの時間を堪能したいんだよ」

「な、な、な…!」



自分の考えてもいなかった台詞に、カガリは顔を真っ赤にし口がどもって何も言えずにいた。

そんなカガリを、アスランは申し訳ないような残念そうななんとも言えない表情をして、

カガリを真っ直ぐに見る。その態度に、余計カガリは顔を熱くさせる。



「そんな…っだって私は、その、ただ……!」



自分が何を言いたいのかわからないカガリ。

アスランが自分との時間を大切に思っている事は嬉しい。だが、抑えが利かないというのは―――。

それほどアスランは、自分の事を思っているという事なのだろうか?

――――――――自惚れではなくて?



「カガリはやっぱり、嫌なのか?」



今度は自分が問われ、カガリは狼狽する。

――――――――嫌なはずはない。

そう言いたいが、心臓がうるさくて上手く言えない。

カガリは仕方なく、首を横に振る。

それを見て安心したように笑い、アスランは再度カガリを愛しそうに抱きしめた。



――――嫌、じゃない。

アスランは自分にとって特別な存在で、嫌よりも逆に心地よくも感じるから。

―――――――――――――――だけど。







「心臓が持たないから、突然するのは止めてくれ」























だ ぁ 恥 ず か し い ! 赤面しながら書いた気がするこれ。

え、え、何でこんなにバカップル化してるの?!ねぇ!8話の影響ですか?!

だってあんなに堂々としてるんだもの!つかSSの予定が微妙に長いよ;英語の意味はyahooで『抑え』を英和で調べてください(笑

拍手ありがとうございますvコメントや感想もあると、うきうきしながら返事致します。05/01/24 等司





ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

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