1934年
私は不死者になっていたらしい。
マシンガンで蜂の巣にされた時は死んだと思ったからね。うん、あれはびっくりした。
で、その原因がヒューイと飲んだワインらしいがフィーロから聞いただけなので詳しくは知らないのだが。
そして今日私は意外と言えば意外で、必然と言えば必然のような気もするが、兎に角意外な奴に出会った。
「やぁ、久しぶりですね。」
「出た、諸悪の根源。」
アルカトラズの監獄に居るはずのヒューイ・ラフォレット。
まったく何をしているのか、本当にこいつには『神出鬼没』と言う四字熟語が良く似合う。
と言うより久しぶりでも何でもない。つい最近会っただろうに。
「会った早々酷い言い様ですね。そんな風に育てたつもりはありませんよ。」
「いや、育てたれた覚えないし。」
「ええ、私も二人の娘しか育てた覚えありませんし。」
じゃあ言うなよ!心の中でそうツッ込んでいたらそれにー…、とヒューイが口を開きかけたので私は聞き返した。
「それに?」
「それに貴方あのワイン飲んでなかったら今ここに居ないじゃあ無いですか。」
明らかな作り笑いでにっこりと笑うヒューイ。
なんか凄く腹立たしい笑顔なんですけど!
「あれ?まだ気がついていないのでしょうか?貴方そんなに馬鹿でしたっけ?」
私が頭をフル回転させている横でお得意の毒舌でツッ込んできた上に、ためしにリーザに着られてみますか?なんて物騒な事を言われてしまった。
「へぇ、リーザちゃんが私に傷を付けられるとでも?」
「そうですね、まあたぶん無理でしょう。」
そう言ってヒューイはこの話はもう終わったと言わんばかりに次の話に移す。
「それで貴方は何の疑問も無いんですか?」
「んー…大抵の事はフィーロから聞いているし……あ!!」
「……何やってるんですか?」
「いや、私が不死者ならヒューイの事食べれるんだよね?」
「そりゃあそうですが、やめておいた方が良いですよ貴方のために。」
確かにヒューイの過去なんか知ったら頭パンクしそう。
そう思った私は右手をヒューイの頭から外した。
「まあ、そのうち知識を頂戴よ。」
「はい、今すべてを教えるわけには行きませんが、そのうちお教えします。」
ヒューイもさっき私のしたことなど大して気にしている様子も無く、話を続けようとしたのだが空から声が降ってきた。
「お父さん、お父さん、そろそろ行かないと間に合わないよ?」
「ああ、そうですね。じゃあまた。」
既に私とは反対方向を向いていたヒューイの頭に手を置き、知識を受け渡した。
「じゃあね、脱獄犯。」
ヒューイが振り返ったような気もしたが、私はそのままその場を走り去った。
「お父さん、どうしたの?」
「いえ、何でもありませんよリーザ。先に集合場所に行っていてください。」
「うん!お父さんも早く着てね!!」
その言葉と同時に空から降ってきていた言葉は途切れ、同時に気配も消えた。
最後にそこに残されたヒューイは呟く。
「まさか貴方にそんなこと言われるとは思ってませんでしたよ。」
『大好きだよ、ヒューイ』
そしてヒューイ・ラフォレットは誰にも見せたことの無いような微笑を見せる。
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