花言葉(和の花)


蓮:遠ざかった恋
ひそやかに咲いては消えた
別れも想いも告げぬままに

ヒノエ



本気の恋なんてしたことがなかった。
美しい姫君たちに心惹かれることはあっても、自分の心はいつでも自分だけのもの。
心そのものを捧げたことなどなかった。


それなのに、気づけば自分の心は彼女のものだった。
いつの間に奪われたのかなんて検討もつかない。
だが、胸を焦がすこの想いこそが恋。
灼熱の焔で彼女を焼き尽くしてしまいたいと、こんなに強く願ったのは初めての経験だった。


(それなのに、よりによってあいつとはね)


彼女の笑みは彼だけのもの。心を捧げ、強く彼女を想うようになったからこそ気づいてしまった。
他の相手ならまだしも、彼からは奪えない。
それになにより、彼の隣にいる彼女が幸せそうだったから――――


(望美、あいつを連れていけ)


揺るがない覚悟を持って勝ち目のない戦に臨む彼を、自分の世界に連れていって。
そして自分の目が届かない地で幸せになってほしい。


(そうしてくれたらオレは、お前への想いをきっと消せるから)


たとえ隣にいるのが自分でなくても、彼女が笑っていてくれればそれでいい。
きっとこれが自分にとっては忘れられない恋になるだろうと確信しながら、遠い天上の世界に思いを馳せた。


お題配布元
ひよこ屋



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