1.旅の精霊
柔らかな日差しが降り注ぐ川沿いの道を一人の青年が歩いていた。
少し大きめの荷物が詰まったバッグと長い杖を背負うすらりとした長身は適度に鍛えられており、小奇麗に切り揃えられた黒髪とエルフ族特有の白い飾り羽が風にそよぐ。
時折、周囲を警戒するような動きを見せる群青の瞳はどことなく寂しげな色をたたえている。
空模様をちらりと見上げた青年が僅かに歩みを速めると長旅の風雨にさらされて少し傷んだロングコートの裾が緩く揺れた。
ピィィーッ。
辺りの空気を劈く様な鳴声に青年の顔が一気に険しくなる。
聞き覚えのあるその鳴声は古風な村に滞在する知り合いに手紙を届けさせていたはずの自分のペットのものだったからだ。
降ろした杖を握り締めると青年は鳴声の方向に向かって走り出した。
「なっ…。」
辿り着いた場所で青年は絶句した。
辺りには数体の魔物の死体が転がり、さらに視線の先では暴走しているのか辺り構わず攻撃の拳を振り下ろすストンゴーレムをリアトロウルフという種の小柄な狼が懸命に足止めしている。
さらに視線をめぐらすと青年のペットである極楽鳥のアカツキが羽ばたく真下でガタガタと震えるウサギ耳の妖精の少女がぐったっりと横たわる狐の妖精を抱えて座り込んでいた。
傍らに座り込み、ぐったりとした狐の妖精を抱き起こすと弱弱しい声で何事かをつぶやいた後で意識を手ばなした。
青年はとりあえず暴走したゴーレムを破壊することにする。
「我が眷属たる風の精、我が命に従い敵を討て。」
妖精達から距離をとり、ゴーレムにしっかりと狙いを定め、発動させた竜巻の魔法をぶち当てる。
ゴーレムを足止めしていたリアトロウルフは気を失った妖精の戦闘用ペットだったのだろう。主が意識をなくしたのとほぼ同時に姿を消していた。
竜巻の魔法に巻き込まれたゴーレムはしばらくその場で硬直していたが、自由になると同時に青年に向かって来る。
宙で弓を射る動作を青年が繰り返す度に放たれる光の矢がゴーレムを射抜き、程なく動きを止めたゴーレムは崩れ落ちることなく光の屑となり、ウサギ耳の少女を包むように舞うとかき消えた。
それを見た青年は呆然とつぶやく。
「戦闘用ゴーレム?!」
つづく
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