王子にゃんこになっちゃいました。3日目


猫は一日の大半を寝て過ごす、というが。

猫へと化したベルも、その習性故、例外ではなく。

談話室のソファの上で香箱を作り、健やかな眠りに身を委ねていた。

「ん、ん…」

身を捩り小さく声を上げ、ベルはぱちり、と目を覚ます。

「あ」

目の前には青い蛙が、否、フランがいた。


文字通り目と鼻の先にフランの顔があったため、ベルは咄嗟に飛び起きた。

「あ、じゃね!何してんだよ、フラン!」

「ふぅ、起きちゃいましたかぁ。残念ですー」

「あのさぁ、オレの質問はスルーな訳?」

溜息を吐くフランに、ベルは苛々と言葉の語尾を吊り上げる。

「ちゃんと答えますってー。えーと、ベル先輩を観察させて頂こうと思って」

「はぁ!?」

「あ、別に、いやらしい意味じゃありませんよ?」

「…っっ、当たり前だろ!」

ベルは少々頬を上気させ、フランの頭、もとい、蛙を殴りつける。

「で?観察するって、何をだよ?」

「そんなの愚問じゃないですかぁ。もちろん、猫化したベル先輩の生態を、ですよ」

「…んなもん調べて、どーしよーっての?」

人差し指を顔の横に立て返答するフランに、ベルは怪訝そうに首を傾げた。

「先輩、お忘れですかー?ミーはキャンディの効果を知りたくて、ベル先輩に協力をお願いしたんですよ?」

「頼まれた覚えも了承した覚えもねぇけどな、断じて」

ベルがぼそりと呟いた言葉を無視して、フランは話を続ける。

「折角こうして猫になって頂いたんですからねー。ちゃんと目的を完遂しないと、失礼かなぁ、なんて」

「いや、調べなくていいから。オレ、全っ然気にしねぇから」

「それじゃ、失礼しますねー」

ベルの言葉はまたもやフランの聴覚神経を通過することなく、右から左へと流される。


「はい、先輩、あーんして下さーい」

「てめっ何す…あがっ」

突然フランの指によって、ベルの顎は無理矢理上下に抉じ開けられた。

「にゃにすんだよ、ふりゃん!」

「わー幼児みたいですねぇ、先輩」

「てめーがやってりゅんだりょ!」

「あ、牙発見ー」

「むしすんにゃ!」

「舌にもちゃんと突起物があるんですねぇ、ふむ、猫そのもの。これ程の効果とは、びっくりですー」

フランは口元に手を添え、僅かながら驚嘆の表情を浮かべた。

「いーきゃげん、ゆびはずせっつーにょ!」

「あーはいはい、わかりましたよー」

そう言い、ようやくフランはベルの顎を解放する。

「…………」

「尻尾膨らませてるってことはー…先輩、怒ってるんですか?」

「……見ればわかんだろ」

「敢えてですよー敢、え、て。猫はわかりやすくて良いですねー」

「お前さぁ、ほんと、そのうっざい性格どうにかなんねぇの?」

「大変申し訳ありませんが、どうにもなりませんねぇ」

「はあぁ………」

ベルは、呆れと怒りと諦めとが混濁した、質量の重い溜息を零した。




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