豪華な音楽に合わせて踊る、綺麗に着飾った人々。
彼らは貴族であり、皆その顔に様々な形の仮面を付け、素性がわからない相手とこの踊りを、パーティーを楽しんでいた。

――仮面舞踏会…

このご時世、貴族達は今回のこのパーティーのようなマスカレードを非常に好んだ。

「ねぇ、あれ見て!」
「あれが噂の…?」

音楽の間に聞こえるざわざわと騒ぐような声。
その声の噂の的になっているのは、現在フロアの中央で踊っている人物。
蒼い大きな薔薇の花を連想させるその姿に人々は踊りをやめ、歓喜の声を挙げて魅了されていく。
相手はおらず、ただ一人で踊るその姿は仮面舞踏会では有名で、出会えると幸福になれるだとか、高貴すぎるが故に一緒に踊れる者がいないと謳われる女性。
誰もが彼女に声をかけられず、その踊りを見ていると、しばらく一人で踊っていた彼女の元へどこからともなく現れたすらりとした男が寄り添い、手を取り一緒に踊り始める。

「綺麗…。」
「あの男は誰だ?彼女とと一緒に踊れるなんて…!」

両者のあまりにも綺麗すぎるその姿に、まるで御伽噺にでも吸い込まれた感覚にさえなるギャラリー。
二人の踊りに魅了されない者などいるはずもなく、踊っていた人々も自分の踊りを忘れてしまったかのようにそれをやめ、そこにいた全員が彼らを見ていた。
やがて曲は終わり、二人はまるで何もなかったかのように離れ、人々の中へとそれぞれ姿を消して行った。








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