五つの言い訳
「オレ、工藤のことが好きなんだ」
玄関に上がりかけた工藤の足が止まる。
彼は幽霊に出合ったかのように、ゆっくりと、おそるおそるこちらを振り向く。
「………なんだって?」
「あの娘とつきあってないんだろ?」
「蘭?…ああ、そうだよ。あいつは大事な幼馴染で…」
それ以上は聞きたくなかった。
「じゃあ、オレとつきあってもかまわないだろ」
論理がめちゃくちゃだが、この際そんなことにはかまってはいられなかった。
だって、耳鳴りのように心臓の音が頭の中で鳴り響き、胸が痛くてたまらなかったから。
工藤は、死人が目の前で生き返ってきたかのような顔でこちらを見ていた。
「…つきあって、何するんだよ?」
なんて野暮なことを聞くのだろうと思った。
しかし、工藤の、相手の真意を測るような眼差しに、気持ちを疑われているのだと気付いて質問の意図を納得した。
「オレ、オレ………工藤とキスしてセックスしてぇの」
時期早尚だとわかっているが、我慢できなかった。―――心臓がもう待てないと言っている。
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written by:matsuyoi
「01.心臓が急かすから」
お題「五つの言い訳」(配布元:http://niwata.jougennotuki.com/)
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