「それじゃあ、もう一つだけ質問です」

 ウェスは少年とヤギを一度ずつ見る。リップは相変わらずうつむいていて、ヤギはもちろん口をもしゃもしゃと動かしている。

「なんでこの街に来たのかなんて聞かないけどさ、よければしばらく泊まっていかない?」
「ウェス?」

 怪訝そうな声をだしたのはバウだけだった。少年はうつむいたままだし、ヤギはもしゃもしゃしたままだ。

「あ、つまりね、袖すり合うも多生の縁っていうじゃない。僕らが力を貸せること、あるかな」
「僕らって俺もかよ」

「いいじゃない。美味しいご飯ごちそうするよ、バウが」

 バウが大きなため息をつく。

「おまえ、星読みの話が聞きたいだけだろ」
「それよりクロビエールに行ったことあるならそっちの方が聞きたいかな」
「俺、話たことあるだろ」
「バウの話はご飯のことばっかりなんだもの」

 ウェスは黙ったまま少年の顔を覗き込む。
 と、バウに向かって手招きした。

「なんだよ」
「しー」

 バウも少年の顔を覗き込む。
 
「ったく。これだから子供は」
「はーい、文句言わない。バウだって居候なんだから」

 起こさないように運んでね。と、文句の先を遮られる。はいはい、とバウは投げやりに言って少年をそっと抱き上げた。気を遣う必要もないくらい、熟睡しているようだったが。

「いいってことかな?」

 ウェスはヤギを振り返って言った。
 ヤギはもしゃ、と動かした口を止めて、沈黙した。


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