~拍手ありがとうございます!創作の糧です!~
―風に寄せる恋―
轟々と吹き付ける風に逆らうように、石田雨竜は歩いていた。
空は暗く、木々がしなり、電線が不気味な音を立てて揺れている。
猛烈な台風が近づいている、と天気予報で言っていた。
滅却師十字が、手首で千切れそうに吹かれている。
息をするのも難しい。
けれど、この程度の風なんて。
僕の中に、渦巻くものに比べたら―
荒れ狂う風のその向こうに、微かに、目指す霊圧を感じる。
そこに虚もいるだろう。
おそらく手ごわい虚だ。
けれど、そんなことよりも。
この嵐を、どうにかしないと―
巨大な虚を目の前に、ルキアは毅然と立っていた。
死覇装が風にばたつき、黒髪はなすがままに煽られている。
雨竜はその後ろから近づきながら、呼びかけた。
「朽木さん」
既に雨竜に気付いていたのだろう、ルキアがゆっくりと振り向く。
僅かに開いたその唇が声を発する前に、雨竜は風に負けない声で言った。
「君が好きだ」
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