モノクロームな世界 黒眼鏡越しの世界は薄暗いモノクローム 裸眼の世界はマギナの光に包まれた薄霧のモノクローム 兄を喪ってから、自分の世界は色を失った。 心因性なものだろうと赤目の医者は告げ、それならば失ったままで構わないと割り切っていた。 喪ったものの大きさに釣り合っていないのだから。 なのに “魁が泣かないから” 月明かりの下、決して明るくはない筈なのに。 "魁が泣かない分、私に涙がまわってくるの" その月光を含む髪が その上気した頬が その艶のある瞳が 色鮮やかに心に焼きついて ジリジリと静かに深く染み渡り 僕はまだ、その甘く痛い大きな傷痕に気が付けないでいる。 |
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