『片翼』


あたしは不完全だ。
美人でもなけ れば気も利かないし、料理が上手いわけでもない。
取り得なんて特にないか ら。
アンタのことは好きだけど、到底幸せになんかできるはずないんだ。

(だってあたしは片方しか翼が無いから)
(だってあたしは空を飛ぶことがで きないから)

ひょんなことから話す様になった。きっかけが何だったかな んて思い出せないくらい、アンタは自然に私の隣にいた。
何でも話せて、他愛 の無いことで笑って、楽しかったのは本当だけど。
その気持ちはいつの間にか 独占欲になり、そんな自分がすごく嫌になった。
いつか離れて行った時、きっ と苦しくてどうしようもなくなる。けれど、今なら間に合うかもしれない。

だ から今日も、向こうからすれ違うアンタを見ないようにそのまま通り過ぎようとし た。

(一人で飛んで行かないで)
(あたしと一緒に地を這って)
(ダ メだ。やっぱり自由に飛んでよ)

「お前、さ。俺のこと避けてねぇ?」
「別に」
「嘘付け」
「別に嘘なんか…」

離れようとした身体は、 あたしの右腕を掴むアンタの手によって止められた。
その場所だけが泣きそう に暖かい。
あたしはこうやってこの手を冷やしてしまうだけなのに、何でアン タはそうやってあたしを温めるんだろう?

「離してよ」
「イヤだ」
「離して」
「イヤっつってんだろ」

(出来ることなら一緒に飛びたい)
(あたしの左側にも翼が欲しい)
(けれど、それは叶わない)


そ うだ、叶わない。
あたしの想いは叶わない。叶ってもきっとすぐに壊れてしま う。
だからもうアンタを見たくないのに。
どうしてアンタは相変わらず、 あたしの隣にいるんだろう。

「何でそこまであたしに構うの?!」
「構い たいからに決まってんだろ!」
「あたしは構いたくないの!!」
「知って るよ」
「それなら…」
「何で避けてるのかは知らねぇけど…」
「……」
「俺は、好きな奴には自分を見てて欲しい」


瞬間、固くした 私の身体から力が抜けた。
あたしとは正反対の考えだった。

大切な人を見 ないようにしたあたし。
大切な人を真っ直ぐに見るアンタ。
真っ直ぐに見 ることなんて、切なくて、痛くて、辛いだけなのに。

涙の代わりに、笑いが出 た。
ああ、この人は。


正反対のくせに、あたしと同じで不器用なん だ。
アンタもあたしと同じで、不完全なんだ。

(正反対だけど、アン タも片方しか翼が無い)
(左側に翼が付いてるけど、右側にはないんだ)
(だから、あたしでいいんだ)
(あたしでなきゃだめなんだ)

どちらか らともなく二人、強く手を繋いだ。
相変わらず、あたしの左手はアンタの右手 を冷やすだけだけど。
それでもずっと繋いでいれば、お互い暖かくなってくる のだろう。

(手を繋いで一つになれば、翼は揃う)
(上手く飛べないかも しれない。途中で落ちてしまうかもしれない)
(それでも、アンタと空からの 景色を見てみたい)

夕日で伸びた影に、一対の翼が見えた気がした。

   ■ オワリ ■



何というか、すみません(汗)
好 きだから逃げようとする女の子と、好きだから向き合おうとする男の子を書きたく て。
私の妄想から一部分抜き出して、30分で一気に書き上げました。(早)
なので読み返して自分でも多々意味が分かりません。
こう、タイプの違う 子達が助け合って愛し合っていくのって萌え理想だなと思いまして。

申し遅れましたが、拍手ありがとうございました☆
この作品はフリー 小説としますので、見つけたそこの不幸なアナタ(←ホントにね)は宜しければお 持ち帰りください。
ええと、「もっと送る」のところでメッセージが送れます ので、何かありましたらどうぞ〜。




ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。