寂しいなんて言えるはずもなかった(幼少沖→近)



「そーご、こんなところに隠れてたのか」
「近藤さん!」

道場の奥に位置する埃まみれの物置部屋で、近藤はうずくまる沖田を見つけた。
近藤の声がするや否や、ぱっと顔をあげ近藤に笑顔を見せる。
近藤はやれやれとため息を吐くと、沖田に手を差し伸べた。

「また今日は随分と奥に隠れたもんだな。俺じゃなきゃ、見つけられないぞ?」
「…ごめんなさい」
「お前は昔から隠れるのが上手いからな。一種の才能かもしれないな」

自分のことのように嬉しそうに話す近藤の手を取り、沖田は立ち上がる。
そんな近藤の様子を見て彼もまた自然と顔がほころんだ。

土方が近藤に連れられこの道場を訪れてからというもの、沖田は度々練習をさぼっては どこかへ隠れるということをただただ繰り返していた。
子供の悪知恵が働くのか、沖田は毎度実に上手に隠れている。
だが、どんなに上手く隠れても、最後には必ず近藤によって見つけられるのだ。


「近藤さん、僕がどこに隠れてるかいつもよく分かりますね。姉上でさえ、見つけられなかったのに」


沖田は近藤の手を握り締めたまま、服に付いたすすを軽く掃う。
以前沖田が初めて身を隠したとき、沖田の姉・ミツバを始め、近藤、土方で沖田を大捜索した ことがある。
彼の姉でも居場所を特定できなかったのに、近藤はいとも簡単にその場所を当ててしまった。
沖田は前々からそれが不思議でならなくて、思い切って近藤に問うた。


「俺はいつでもお前のことを見てるからな!だから分かるんだ」


見上げた先には満面の笑顔を浮かべた近藤の顔。
沖田は彼の言葉が嬉しくて、でも照れくさくて、赤らむ頬を彼に悟られないようにそっと俯いた。


「(………土方ばっかり構ってたから無性に寂しくてしかたなかったけど…、僕のこともちゃんとに見てくれてたなんて、)」


近藤は俯く沖田を抱き肩車すると、さあ練習だ、と一言声にし、道場へと向かった。



(寂しいなんて、言えるはずなかった。だってあなたはいつだって僕を思ってくれてる。 これ以上、なにをのぞむの?)
(幼少沖→近/thanks for your clap!)





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