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story of Die*Kaoru
[甘えんぼ]









じりじりと照りつける太陽。
あまりの眩しさに次第に意識が浮上し、うっすらと目を開ける。
開かれた窓の外から、蝉の鳴き声が響き渡って。
暑さを助長させていた。

ふと、眠りに就くまでは隣にいた赤い髪の恋人がいないことに気付いて、もそもそと身体を起こす。

「……?」
「あれ、薫くん?起きたん?」

半身を起こした瞬間に、背後から声をかけられて。
振り向くと、探していた赤い髪の恋人が烏龍茶を片手に立っていた。

「…何しとん、ダイ…」

無意識のうちに手を伸ばす。

「暑くて起きてん。薫くんも?」

手にした烏龍茶のペットボトルに口を付けながら、ダイが此方へ向かってきた。
伸ばした手の中にふわりとおさまる身体。
開いた片手で抱き留められて。

「どないしたん、甘えたやん」

くしゃくしゃ、と髪を撫でられる。

「んー…うん……」

むずがるように、頷く。

朝から目覚めはすっきりなダイに対して、滅茶苦茶目覚めの悪い俺。
ダイの体温に次第に意識がうつらうつらし始める。
明け方近くまで起きていた身体には、まだ睡眠が足りひんらしい。

「眠いん?」

やわからいダイの声。
さっきまで求めとった人物と同じとは思えんくらい、穏やかな声が耳元を掠める。

「………ぅん…」
「ほな、もうちょっと寝よか」

手にしていた烏龍茶をベッドサイドに置いて、ダイが俺の身体を抱えたままでベッドに横になった。
シャッ、と遮光カーテンの引かれる音。
差し込んでいた直射日光が遮られて、時間の読めない薄暗い空間が出来上がる。

「ダイ……」
「ん?」

擦り寄るようにして胸に顔を埋めると、ダイがゆっくりと髪を梳いて。

「おやすみ、薫くん」

額にやわらかく口唇を押し当てながら、そう囁かれた。

「ダイ
―――

口唇がかたどった名前は、果たしてダイに届いたのか。
それは定かではないけれど。
抱き寄せられたダイの腕の中はひどく心地良くて。
微睡み始める意識に抗うことなく、俺はゆっくりと夢の世界へ落ちていった。



END





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