亀の歩みですが、これからもじりじりと続けて行きたいと思います!拍手ありがとうございました!※現在、拍手は4種です。水炎→夢商人→カティ&オス→剣士炎






拍手御礼:水x炎  最果ての場所


Hmmm..........Hmm.........
近く、遠く、ハミングが聞こえる。ああ、そうだった。いつかの・・・ララバイ。

俺の母は、そんな風に歌わない。
なのに何故。
郷愁を誘われるのだろう・・・。

けして聖地(ここ)では嗅ぐ事の無い、あの惑星(ほし)の空気の匂い。
自宅で香る、俺の嫌いなスープの匂い。

知らず、誘われるように、宙に手を伸ばして・・・・・
それは指先から、音も無く、すり抜ける。
何かに置き去りにされたような感覚に、薄らぼんやりと、目覚める。

ハミングが途切れて、そちらに視線をやると、男は髪を横に流して、白い背中を晒し、少しだけ振り向く。
「起こしましたか?」
「いや。」
こちらを向き切らないので、その表情は分からない。白い天蓋から流れるレースが、窓から流れてくる日の光と風に揺れる。
惜しげも無く晒される白い背は、均整が取れているものの、やはりどこか骨張っている。サラサラと、この男特有の髪が、肩にかかり切らずに、少しだけ背に残っていて。俺はそれを指先で弄んでから、白いシーツの中、身体を泳がせるようにして、寝ころんだまま、伸びをする。
「んーっ!!」
まるで現実感のない、このふわふわとした空間はどうだ。まるでどちらが夢か、判然としない。
この男と、共にいる時間だからか。
不意に可笑しさが込み上げて、喉で低く笑う。
妙に生活感がなく・・・ただ、眩しい。
「起きます?」
「いや、まだ寝る。」
「もう昼も近いですよ?」
そういえば、確かに腹は減っている気がする。
「いいんだ。」
答えてから、それから・・・。それから、逡巡して、けれど。
「なあ、歌えよ。」
小首を傾げるようにしてから、男は両腕を後ろについて、俺の方を伺い見る。その顔を見上げながら、足をぶらぶらさせそうな、子供のような仕草に、小さく苦笑を漏らす。
「歌・・・?なんの歌です?」
再び重たくなってきた、瞼に抗いきれず、あふ、と欠伸をして。
「さっきのだ。さっきの・・・。」
「さっきの?」
「そう、あの・・・・ララバイ。」
余りの眠気に最後の方は発音も怪しい。
なあ、早く歌えよ。眠っちまう。
続ける言葉は、果たして届いただろうか。
鼻に抜けるような柔らかい笑い声。それから・・・。
「ララバイという年でもないでしょうに・・・・。」
やがてまた、ハミングが続く。

草原の向こうから、遠く、弟の声。
追いかけるように、妹の高い笑い声。
ざあざあと、辺り一帯の草むらを洗いながら走り抜けるような、風の音。

『おやすみ。』

俺は祈るように、想い出に告げ、今度は自分から、それを手放した。

END.





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