(恋は24時間 / 真田)
私がアルバイトしているコンビニに、時々やって来る学生がいる。
(……あ、今日は来た)
いつも黒い帽子を被って、テニスバッグを背負っている彼だ。正直とても学生とは思えない風貌だけれど、ここの近所の立海大付属中学校の制服を着ているので間違いない。
信じられないけれど、彼は高校生の私よりも年下なのだった。
「すまぬが、一つ尋ねても良いだろうか」
「あっはい!」
「ここのコンビニエンスストアに梅昆布茶は置いているだろうか?」
「えっと、すみません梅昆布茶はないです……」
「そうか、かたじけない」
そう、彼はまるで武士のような言葉で話すのだ。私はそうやって初めて彼と会話したその日から、何故か彼のことが気になって仕方なくなっていた。
「……店長、うちの店に梅昆布茶入れませんか?」
店長にそう打診してみたけど微妙な反応だった。まあそれもそうだ、しかも今、夏だし。
同じ時間のシフトになった人全員に「あの人格好良くないですか?」と聞いてもみんなまるで興味なさそうに遠くを見ているだけだし。
なぜあの人の良さがわからないのか私にはわからない……。
時代劇や侍、忍者が好きな私には彼ほど理想な人はいないのに。
(近付きたい!少しでも、彼に)
「あっ店長!レジなら拙者にお任せくだされ」
「……は?」
「ありがとうございます、200円のお釣りでござる」
うちのコンビニで忍者がバイトしているという噂が、いつの間にか巷で流れていることを私が知る由なんてなかった。
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