まだまだ続きます

主人と仕える者 9

「本当だ。それじゃあ、次の組で体を温めるとするか」
ガウリイはニヤリとしながら言いました。
「あ〜ら?それじゃあ指揮の方はどうするのよ?」
「それは姫様がすればいいじゃないか」
「あのねぇ。あたしが皆になんて思われてるか知ってるでしょ?」

リナ姫の問いにガウリイは柔らかく微笑みました。
「姫。姫の思うままに・・・」
ガウリイはそう言って片ひざをつき、頭を垂れました。
その仕草がとても綺麗で、リナ姫はいっとき口が開けませんでした。


「どうゆ……」

リナ姫がガウリイに問いただそうとした時、前の組の試合の終わりを告げる音がしました。

「さあ、行こう。姫!」

リナ姫はガウリイの笑顔が納得できないまま、試合の大将の位置に陣取りました。

両陣共に配置についたことを確認した後、試合開始の合図がしました。

「突撃せよ!各々目の前の敵を討つことに専念せよ!」
馬に跨っているリナ姫はすっと剣を掲げ、その良くとおる声で初めてガウリイ以外の前で命令を下しました。

ガウリイはそのすがすがしいほどまでの迫力に目を細めながら、リナ姫の命令に従い敵陣に突撃していきました。
有無を言わせないその風格に兵士たちはしばらく呆気に取られていましたが、ガウリイの突撃で我に返り、とっさにガウリイに倣い、敵陣へ散って行きました。

リナ姫にとって兵士達が素直に命令に従ったことを不思議に思いながらも、戦況を冷静に分析していました。

けれどあまりにもガウリイの働きが素晴らしく作戦も何もありませんでした。
ガウリイ一人の働きでリナ姫の隊は勝利を目前にしていました。
『あたしの出番ないじゃないの!』
リナ姫はぶつぶつ言いながら、目の前の戦いを見物していました。

そう、もうなにもすることがなく見物になっていたのです。
あまりにもすることがなさすぎて欠伸をするぐらいに・・・・。


まさにその時、突然横から人の気配がしました。
それもものすごい殺気を帯びた人の気配が・・・・。

リナ姫も突然のことに振り下ろされる剣をとっさに避けるだけのことしか出来ませんでした。
避けた途端にリナ姫は馬上でバランスを崩し、落馬してしまいました。

リナ姫の馬も驚いて暴れ始めました。

当然、リナ姫の警護役の兵もいきなり起こった事に咄嗟に暗殺者への対応が出来ませんでした。


キイィィィィーン


落馬したリナ姫に暗殺者は容赦なく切りつけます。
リナ姫も咄嗟に剣を抜く暇もなく鞘で暗殺者の剣を防ぎました。

『チッ!』

暗殺者の舌打ちが聞こえました。
一撃で容易くリナ姫を討てると思っていた暗殺者にとってはリナ姫の反射神経の良さは計算外でした。

ですが、リナ姫がいくら秘密でガウリイから手ほどきは受けていたとしても暗殺者はプロ。
徐々に形成が悪くなっているのがリナ姫にはわかりました。


『舌打ちしたいのはあたしよーーー』




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