冷たい水をごくごくと飲み下した、形のよいアダムのりんごが上下する。精悍だ、と一瞬でも思った瞳にはやっぱりというか赤がさしていて、すっと、意味ありげに細められた。

「…なんで」

こちらが全く顔も名前も知らない相手に認識されているというのはなかなか気分が悪い。

「銀時がさ、」

ソファの軋む音、ブランケットをゆっくりと剥ぎ取り、詰められた距離。酒とタバコと香水の匂い。最悪のタッグ。

「今年は当たり年だって騒いでたんだよ」
「…何の」


頭より先に後退さった踵がこつん、と音を立てる、そこにある事実は壁。なんでか分からないけど、大学のゼミ室で人生最大の危機をむかえている気がする。

「すげぇ好みの顔がいるって」

あのセクハラ野郎、院生つかまえて何言ってやがる、といまさら悪態ついてももう遅い。だっておそらくこいつらは。



廊下で響く間の抜けたスリッパの音、罠にはまった小鳥。




「共犯者」(パラレル 銀+土沖)
06/09/19



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