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オリイオ様と逆行六神将ルーク:7をお送りします。



「はぁ!? アンタが僕らのオリジナルだってぇ!?」

 ユリアシティのティアの部屋、セフィに引きずられ連れ込まれたシンクは納得いかなそうに顔を歪めた。

「そうだよ。僕が君たちのオリジナル、導師イオン」

 まぁ、今はセフィだし、その名前もどうでもいいけどさ。
 にっこりと黒い笑みを貼り付けてシンクと相対したセフィはその顔面の半分を覆う仮面をあっさりと剥ぎ取った。

「何すんのさ!」
「シンクはあのビア樽嫌いだよね?」

 にやりと笑うセフィはまったくシンクの言葉に応えることなく自分の要求のみを押し通していく。

「あのビア樽さぁ、戦争起こしにキムラスカに行くでしょう? シンクさぁ、あいつに付いてってくれない?」

 それでそれとなく樽の行動僕に教えてくれればいいから。参謀総長の君なら簡単でしょ? 髭も目障りだけど、とりあえずアッシュに接触してこなきゃアイツはしばらく放っといていいからさ。
 黒い台詞とは裏腹にその顔は清清しいまでの笑顔だった。



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「死んだはず、いえ貴方が殺したはずの僕は、こうしてちゃんと生きていますよ? 預言通り、ね」

 にぃっと口元を持ち上げたセフィにぞくりと背筋を震わせたモースは青い顔のままガタガタと震えだした。

「どうしたのさ、大詠師。幽霊でも見たような顔してさ」

 自分の後ろからかかった声にびくりと飛び上がるようにして振り向いたモースは仮面の下でぐにゃりと歪んだ唇から目を離すことが出来ない。

「うんざりなんだよね。アンタもヴァンも、『レプリカ』をいいように利用して、見下してさ」

 いつまでも僕らがあんたらの掌で踊ってると思ったら大間違いだよ。
 モースの横を通り過ぎ、数段の階段を下りたシンクはイオン―――セフィの隣に立って仮面に手をかけた。
 やめろ! と静止を叫ぶモースに、アンタの言うことを聞く義理は無いね。と薄ら笑いを浮かべたシンクが仮面を落とすのと同時に謁見の間にはざわめきが広がった。

「アンタには同胞を殺された。『イオン』もずっと殺されつづけてきた。預言なんて枯れかけた残像のために殺されつづけてきたんだからね!」

 ぎらぎらと殺気に満ちた視線を向ける。
 ルークたちと一緒にいる『イオン』、アッシュと共に現れた『セフィ』。そして『シンク』。三人のイオンにその場にいた人間たちは言葉を失った。
 そんな中悠然と笑みを称えたイオン―――セフィは、もちろんその報復は受けてもらいますが、と一旦言葉を切るとその一切の表情を殺ぎ落とした。

「それよりもまず、アッシュに償っていただきましょう。ちょうどキムラスカにいるわけですから、貴方とヴァンの企み、存分にインゴベルト王に聞いて頂いたらいいですよ」

 ファブレの嫡子を誘拐し、死の危険すらあるというのにレプリカ情報を抜き、勝手に彼のレプリカを製作して…。仮にも王族のレプリカを血に染めた。

「これは立派なキムラスカへの敵対行動でしょう。貴方は教団員として相応しくありません」
「何を馬鹿なッ!」

 お前に指図される覚えなど…
 顔面を真っ赤に染め、興奮したモースがセフィの言動を切って捨てる前に、刃のように鋭利な言葉がモースを貫いた。

「導師である僕に逆らうんですか?」

 逆らうならダアト式譜術の練習台にして差し上げますが?
 言外に含まれた脅しは音素を帯びた右手によって信憑性を強調され、過去の凄惨な体験が思い出されたのか、大詠師の体ががたがたと震えた。目に見えて顔色の悪くなったモースはその場にがくりと崩れ落ちた。
 意気揚揚とオラクルを呼び寄せたセフィはさっさとモースを拘束させ、インゴベルト王に許可を取って牢獄へと放り込んだ。

「………なぁ、…なんかモースがえらく怯えてた気がすんのは俺だけか?」
「「「気のせいだよ(ですよ)」」」

 首を傾げるアッシュを前に、同じ記憶を所有する三人はすがすがしいまでの笑顔を浮かべ、寸分違わぬタイミングでさらりと事実を塗り替えた。


 *


 セフィから明かされた第七譜石の内容に謁見の間には沈黙が落ちた。
 顔を青くして硬直しているもの、今にも気絶しそうなもの、眉間に皺を寄せ考え込むもの、様々だがそれを容易に信じようとはしないものも存在する。
 しかし、そんな猜疑心たっぷりの視線も言葉もセフィの前ではどこ吹く風。取るに足らないものでしかない。

「僕の言葉の是非など現時点ではどうでもいいことなのですよ。ただヴァンの行動とアクゼリュスの事を鑑み、それによって現在の状況がどう動いているか確認すればおのずと世界の方向性を貴方達でも見出せますよ」

 だから、モースの戯言にほいほい乗ってアッシュに心労かけるようなことは止めてくださいね。と黒い笑顔を振りまいた。
 流石のインゴベルトもこれに逆らえるほどの精神力は持ち合わせておらず、「至急調査隊を!」と声を張り上げた。

「ふふふ。流石はインゴベルト王、賢明な判断ですね。じゃあ、懸命な判断ついでにマルクトへの宣戦布告なんて事を考えるもの止めて、さっさとヴァンの国際手配でも何でもして下さい」

 その方がよっぽど建設的だ。と言うセフィの横で、「まだしてないわけ!? ダアトはとっくに手配したよ」とシンクが付け加えた。

「………いつの間に」
「ふん。やるなら徹底的にやる」

 唖然とするままに漏らした言葉を受けて、シンクは得意そうにアッシュに向かって口元を持ち上げた。

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