その紅に見たものは、何だったか

紅よりも赤く、赤よりもより鮮やかな

目の前に舞う赤は何だったか

忘れはしない

それは、赤い記憶

すべてが赤に、真っ赤に染まる記憶

父の、母の、姉の、自分の知りうる限りの人々の

赤が舞う

舞い散る

その赤によく似た、鮮やかな紅は

憎しみと愛情とを司る化身

愛と憎の象徴

その紅が、もっともっと赤に近ければ

その紅が、太陽の色さえしていなければ

手に持つ刃の煌きを、月が照らす

刃を紅へと向ける

月だけが、その刃の行方を見つめる

結局、誰にも向けられなかったその刃を月が照らす

この愚かな、哀れな少年に救いを

救いなどないとは知っている

復讐に手を染めるものに、救いなど

鈍く輝く刃が貫くのは、紅ではない

刃はただ、少年の心を貫いていく

目に見えない赤が、少年の胸から溢れ出す

ああ、月が笑っている

愚かだと、哀れだと

この刃で、紅を貫くことができれば

この刃が、紅を貫くことがなければ

静かな夜

少年の姿を見つめるのは、月ばかり

永遠とも思える、今宵の夜

闇夜から抜け出す術を少年は知らない



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。