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(ハウル×ソフィー)
君はとても強い。
ハウルは硬く閉ざされた扉を前にこの後どうすればいいものやらと考えながら、控えめに2回ノックをしたがやはり
中から返事がくることは無かった。一度あけてみようかとドアノブに手を掛けてみたのだが、完全に拒否をされていて
扉を開けることができずにいた。
扉にはわけのわからない魔法が掛けられていて、他の人が触れても何もないのにハウルが触れよう
とするとピリピリと電流が流れてくるようになっていてあけることができないのだ。
ソフィーの言葉の魔法のせいだと思うのだが、王室付き魔法使いという肩書きを持つ
ハウルにとってはこんな魔法なんて本気を出せばすぐに解除して
無理やり中へ押し入る事なんて朝飯前なのだが、それをしてしまえば今度は目の前に
ある壁なんかよりももっとやっかいな心の壁ができてしまうであろう事を考えるとそんな事ができる
わけもなかった。
「ごめん、ソフィー。僕が悪かったよ」
聞こえているのか聞く気があるのかどうかもわからないがとりあえず自分の非を認めて
ハウルは素直に謝罪を述べたのだが、やはり中から返事は来ない。
このままこの場に居続けてもソフィーの期限を損ねてしまうだけだと思った
ハウルは一度くるりと背を向けたのだが、わずかな希望をのせてもう一度だけ
ドアノブに触れてみるようともう一度だけ扉に手を掛けた。驚いたことにそこにはもう拒否反応が出ておらず、
ハウルが扉に触れても電流など流れることなくいとも簡単にドアノブをまわすことができた。
ソフィーが許してくれたのだろうかと思いながら、ゆっくり扉を開くと中はほんのり薄暗く、
よく目を凝らさないと中の状況がいまいちよくわからない状況だったのだが、
ハウルには行くべき場所が不思議とわかっていて、ベッド近くの椅子に迷うことなく向かっていった。
椅子に座っているソフィーの顔はよく見えなかったのだが、ハウルは椅子に座っているソフィーの前に
しゃがんで下から覗き込むような形でソフィーの顔を見た。何も反応を示さないソフィーの頬に優しくキスを
すると、涙がほろりと流れてハウルの唇を濡らす。ハウルは流れてくる涙を拭いながらそっとソフィーを
抱きしめた。
「ソフィーは、とても強い人だね」
どんなにいやなことがあっても、苦しいことがあっても決してハウルには言おうとしなかったソフィー。
結局ストレスが溢れてしまったソフィーが愚痴を最初にもらした相手がカルシファーでソフィーが今どんな
気持ちでいるかということをカルシファー伝いに伝えられたということにハウルは耐えられなかった。
カルシファーはこれだけ一緒に居てもソフィーの事を気が付かないハウルが悪いと、ソフィーがハウルに
伝えなかったのは仕事で疲れているハウルを気遣ってのことだといっていたのだがそんなことわかっていた。
わかっているが耐えられなかった。結果、ソフィーにあたって自分はもう必要ないのだとソフィーはひとりで生きて
いけるじゃないかとずいぶんとひどいことを言ってしまい今の状況になったのだ。我ながらずいぶんと子供だと思う。
「頼りないかもしれないけれど、僕にもソフィーを守らせてよ」
ソフィーは腕の中で小さく頷き、ハウルの背中にそっと腕を回した。