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お礼フェイなのSS 「初恋は叶わない?」
初恋は叶わない、なんてのはよく聞く言葉で。
でも、そんなのは、絶対に嫌だから。
「どうしたの? フェイトちゃん。お話って……」
「うん、その……なのはに、聞いて欲しいことがあるんだ」
時は放課後。今日は管理局の仕事も簡単なものだけで、まだまだ時間には余裕がある。
そして私となのはは校舎裏に来ていた。理由は単純明快。私がなのはに来て欲しい、と頼んだからだ。
こんなところになのはを連れて来たのには、ちゃんとした理由がある。
とても大切な話を、なのはに聞いてもらうため。二人きりなのも、そのためだった。
「……私となのはは、女の子同士だけど」
頬が熱い。きっと今私の頬は傍から見てもはっきりと分かるくらいに、赤くなってしまっているのだろう。
でも、それでも視線はなのはから逸らさない。
どうしても、伝えたい想いがあるから。
「それでも、私は、なのはが好き」
「……っ!」
私の言葉に、なのはの頬がかっと赤くなる。
蒼い綺麗な瞳をこれ以上ない程に見開いていて、動揺している様がよく分かった。
「ともだちとして、じゃない。世界で一番、たった一人――そういう意味で、なのはのことが好きなんだ」
風が、吹きぬける。
まだどこか春の気配を漂わせている優しいそれは、私となのはの綺麗な亜麻色の髪をふわりと揺らした。
けれど目の前に立つなのははそんなことを気にしている余裕などはない様で、頬にかかっているそれを払おうとする気配はない。
それどころか、ただ私の言葉に顔を可哀想なくらいに真っ赤に染めるばかりだった。
「え、あ……その、あの」
何を言えばいいのか分からないのか、なのはは忙しなく視線を移らせ、おどおどとしている。
こんななのはも可愛い――などと考えてしまって、そんなことを考えている場合ではないだろう、と自分の頭の中に僅かに残る冷静な部分でその思考にストップをかけた。
「……なのは」
「ななな、なあにフェイトちゃんっ!?」
ためしに少し声をかけてみると、面白いぐらいに過剰な反応が返ってきた。
これは、意識してもらえるだけ進歩したと思っていいのだろうか?
でもこれでは普通の会話ですら成り立たないだろう。それはちょっと、いや、かなり困る。
「ええと、意識してもらえるのは嬉しいけど……そんなに緊張しなくても」
「き、きんちょう、なんてししし、してなっ!?」
って、舌噛みながら言っても全く説得力のかけらもないと思う。
「……えーと、なのは、大丈夫?」
「ら、らいひょうふ……」
大丈夫だと言いたいみたいだけれど、未だに舌が痛んでちゃんと発音できてない。
そんななのはも可愛い――と、また先程と同じことを考えている自分に気づき、ちょっとそんな自分に呆れる。
でも仕方ない。だって私は、なのはのことが本当に好きなんだから。
「ねぇ、なのは」
「な、あに、フェイトちゃん」
なのはが落ち着くのを待ってから、再び声をかける。すると少しどもりながらではあるけれど返事が返ってきた。
その瞳はまだ多少動揺の色は隠せていないけれど、しっかりと私を捉えている。きっと先程の私の言葉を聞いてのことなのだろう。
ゆっくりと深呼吸して、暴れる心臓を少しでも落ち着かせようとする。
これからなのはに伝えるのは、私なりの『覚悟』。
「……きっとなのはは私のことなんて眼中にないんだろうけど」
そこまで言うとなのはは何か言いたそうに口を開く。けれど、結局それは何の音も生み出さなかった。
それでいい、と思う。下手な慰めの言葉はいらない。そんなものじゃ、私の本当に欲しいものは手に入らないんだから。
「でも、ね、なのは」
「え?」
ぐ、となのはの腕を引っ張って、顔をこれ以上ないというほどに近づける。あと少しでも近づけば、キスできるほどの距離。
落ち着いてきていたなのはの頬が、再び真っ赤に染まった。
でも、それはきっと私も同じだ。こんなにドキドキしているのにそれを表情に出さないように出来るほど、私はポーカーフェイスが得意ではない。
「今のままじゃ、終わらないから」
しっかりと、なのはの透き通った蒼い瞳を見つめながら。
「絶対に、いつかなのはを振り向かせてみせるよ」
「ふぇ、いとちゃ」
「――だから」
掴んでいたなのはの腕を引っ張って更に距離を縮める。なのははキスされると思ったのか、ぎゅっと目を瞑った。
そんななのはに少しだけ微笑んで、柔らかい前髪をそっとかきあげて、おでこに唇を落とす。
「ぁ……?」
予想外だったのか、なのはが声を漏らした。
――その声が、どこか残念そうだったのは、きっと私の気のせいだ。
「覚悟、しておいてね? なのは」
自然と、笑みが零れた。
まだきっと片想いな私の初恋だけれど、絶対にこのまま終わらせたりなんかするものか。
足掻いて、足掻いて――いつかきっと、君の横に立ってみせるから。
いつか書いた突発SS。
「初恋は叶わない」に全力で真っ向対決なフェイトさん。
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