赤に青、という取り合わせほど目に痛いものはないと、その場にいた誰もがそう学んだ瞬間であった。

「…なんじゃい」
「………いや」
「………なんでも…」

遺跡船を救った功労者として正式に呼ばれた一行が、おそらく海をイメージして作られたのであろう揃いの正装に着替えた時の事である。

向こうが用意してくれたものである以上、着て行かぬ訳にもいかないのだがそれにしたって、

「モーすけ似合わなすぎ!!」
「言うな、わかっちょるわ!」

自覚はあるのだろう、衣服が届いた時から着替えを渋っていたモーゼスは、真っ赤になって――怒りからか恥ずかしさからかはわかりかねた――羽織ったばかりの上着を脱ぎ捨てる。

「じゃけイヤじゃっちゅーたんじゃ!こがなもんワイは着んぞっ」
「仕方ないだろう、駄々をこねるな」

床に捨て置かれた上着を、クロエが拾い上げた。
モーゼスの視線は上着を離れ、自然と彼女の脚を追う。

「…クっちゃんはええじゃろうな、似合うとるし」
「そうか?」

大きくうなずいてみせる。
グリューネ、ノーマ…は飛ばして――シャーリィ。普段とは違う、清楚な雰囲気がなかなか……

と、モーゼスは部屋の隅に、一際白くて細い脚がうずくまっているのを見つけた。
それに気付いたジェイは慌てて視線をそらす。
にやりと笑みが深まる。

「ほー。どこのぼんが迷いこんだか思えば、ジェー坊じゃったんか。どこぞの名探偵か思うたわ」
「体は大人、頭脳は子供な人に言われたくないですね」
「個別で短パン用意されるようなガキにこそ言われたぁないのう」
「へぇ、なかなか言うようになりましたね…モーゼスさんのくせに」
「やるかァ?」
「後で泣いても知りませんよ」
「だーもーっ、やめーっ!ほっとくとすぐこうなんだからー!」

服の皺を気にしながらも、ノーマは二人の間に割って入る。
咎めるように二人を一瞥し、

「もー似合わなくたってなんだって、どーでもいいじゃん!ほら、せっかくみんなお揃いなんだしさ!」

お揃いなんだしさ。
モーゼスとジェイは、互いの服をちらりと見比べる。


「こがなもん、絶対着んぞっ!」
「こんなもの、絶対着ませんから!」

息ぴったりに言い放ってから、再び睨み合いを始めた。





――――――――
正装は女の子のために作られたんだと思います←





一言いただけると励みになります! (拍手だけでも送れます)

あと1000文字。