「貴族の旦那ぁ、いいモンが入ってますぜぇ?」 聞こえたのはガラガラの濁声… 俺は売られるんだ… 暗い視界の中、俺はそう思った。 『Release』 Act.0 剣を持った騎士がウロチョロしてるし、貴族が大威張りで道を闊歩している時代。 俺は、ピンチに陥っていた。 「貴族の旦那ぁ、いいモンが入ってますぜぇ?」 俺は、一件の人売りの店で目隠しをされて後ろ手に縛られていた。 別に身分が低いわけでもない。 だけど、気が付いたらここでこうやって暗いところに閉じ込められてさらに目隠しをされていた。 家に夜盗が入り、俺を部屋から連れ出した。 思いっきり抵抗した…けど、ビクともしなかった。 ここに売られてもう1ヶ月になる…。 俺は上物として売りたいらしく、中々いい値で売れないとガラガラ親父はぼやいてた。 俺は暗い世界でいつもビクビクしていた。 あぁ…俺はとうとう売られちまうのか…って。 その日は唐突にやってきた。 「何やの…。そんなにえぇモン入ったん?」 「へぇへぇ!そりゃもう上玉ですぜ!」 「ふーん…見るだけ見たってもえぇわ。」 僅かに聞こえる店の外の声。 上玉…っつーことは…俺か。 また、いい値がつけられずに帰ればいい…。 カツーン…カツーン…と響いてくる二人分の足音。 目隠しされていて見ることはできないけど、これまで何度も聞いた音だ。 妙な訛りのある言葉使いの男とガラガラ親父が目の前に立ったのが感覚的に分かった。 「綺麗な紅の髪やな…確かに…アイツに……」 「顔も見てみますかぃ?」 ……ガラガラ親父の手が俺の目隠しの布の端へと移りゆっくりと目隠しを外す。 突然入ってきた眩い光に視界がぼやける…。 「………っ…」 「お買い上げなさいますかぃ?」 段々と視界がクリアになり訛りのある男が息を呑んでるのが分かった。 俺の顔がどうかしたかよ? そう、思いながら男を睨んでいると男はガラガラ親父にこう言った。 「いくらや?」 主人の名は…忍足 侑士…。 俺は…とうとう買われてしまった…。 拍手ありがとうございますv とっても励みになります♪ これから連載しようと思っている小説のプロローグ…みたいなものです。 よろしければ連載の方でお楽しみください☆ |
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