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book-fairy


私の好きな場所、図書館。

大量の本に囲まれて、本の世界に浸れて、とても幸せな時を過ごすことが出来る。

今日も放課後、いつものように図書館へ向かう。

手にはバックと返却する本が数冊。

そして、図書館の扉を開くと、今日は一番乗りみたいだった。

司書の先生に挨拶して、本を返却して、お気に入りの場所に向かった。

暖かい日差しが差し込む窓側の席。

バックをポンっと、置いて、分厚い大全集の置いてあるコーナーへ向かう。

お目当てのとある全集の一つを引き抜いて、その本を抱えて、さっきの席に戻って座った。

全集などの分厚い本は、正直重くて持って帰りたくない。だからいつも図書館で読んでいるのだ。

パラパラとページをめくり、昨日の続きのページを開いた。

今日はここから。そう思って開いたら、本の間から、一枚の小さな紙が出てきた。

「何これ?」

そこには小さく、綺麗な字で『きょうはなんのひ?』という文字と番号が書かれていた。

「きょうはなんのひ?」

えっと・・・なんか記念日だったっけ?特別な日じゃないと思うけど。

それよりも、この番号なんだろう。暗号?

うーん・・・と悩んで、はっとした。

もしかしてこの番号って、分類番号?

分類番号とは、本の一つ一つについている番号のこと。

図書館に本を配置するための重要なもので、分類番号を見れば、

どの位置にその本が配置されているかわかるようになっている。要するに、本の住所のようなもの。

私はその紙を持って、立ち上がった。

えっとこの分類番号は・・・絵本?

絵本のコーナーに行って、タイトルを探すと、確かにその本はあった。

本棚から、その本を引き抜き、パラパラと中を確かめる。絵が可愛い。

私はその場に座り込んで、夢中になって絵本を読み始めた。

わくわく、どきどき、ほわん。

その本は読んでいてとてもいい気持ちになれて、

読み終わった後、思わず絵本の表紙を見てニッコリと笑みを零したほど。

私は絵本を片手に席に戻り、借りて帰ろうと決めて、全集の続きを読み始めた。


翌日も、私は放課後、いつものように図書館へ向かった。

手にはバックと返却する本が数冊。

そして、図書館の扉を開くと、今日は先客が居た。

司書の先生に挨拶して、本を返却して、お気に入りの場所に向かった。

暖かい日差しが差し込む窓側の席。

バックをポンっと、置いて、分厚い大全集の置いてあるコーナーへ。

お目当てのとある全集の一つを引き抜いて、その本を抱えて、さっきの席に戻って座った。

パラパラとページをめくり、昨日の続きのページを開いた。

今日はここから。そう思って開いたら、本の間から、一枚の小さな紙が。

昨日と同じだ。あれ。でも昨日の紙は私が持って帰ったし・・・。

そこには小さく、綺麗な字で『はじめてのおつかい』という文字と番号が書かれていた。

また?!

今度は違うタイトルだし!

私はその紙を持って、立ち上がった。分類番号から判断して、また絵本。

絵本のコーナーに行って、タイトルを探すと、確かにその本はあった。

本棚から、その本を引き抜き、パラパラと中を確かめる。絵が可愛い。昨日の本と同じ作家さんの本なんだ。

私はその場に座り込んで、夢中になって絵本を読み始めた。

どきどき、あっ!!、ほわん。

その本も昨日と同じで読んでいてとてもいい気持ちになれて、

読み終わった後、絵本の表紙を見てニッコリと笑みを零した。

私は絵本を片手に席に戻り、今日はこの絵本を借りて帰ろうと決めて、

全集の続きを読み始めた。


翌日も、その次の日も、同じことが繰り返し起こり、

私はいつしか全集の本の間に挟まれている紙を見ることが楽しみになっていた。

それなのに、ある日、ぱったりと紙がなくなってしまった。

その紙を落としてしまったのかと全集と自分の席との間を往復しても、

全集のページを一枚一枚捲って、本の間を確認しても、

違う全集のページも全て見ても、紙は無かった。

「どうして!?」

私はなんだか悲しくなって、その日は読書を早めに切り上げて家に帰った。

そして次の日、私は朝から「今日はあるかな。」と期待と不安が混じった思いを抱きつつ、

授業の合間の僅かな休み時間も図書館に向かい、紙を確認した。

でも結局、紙は放課後になっても挟まれていなかった。

次の日、私はまた懲りずに、朝から授業の合間の僅かな休み時間も図書館に向かい紙を確認した。

でも結局、紙は放課後になっても挟まれていなかった。

そのまた次の日、私は少し諦めモードで、・・・でも僅かな望みを抱きつつ、図書館に向かう。

でも、授業の合間の僅かな休み時間も紙を確認したけれど、紙は挟まれていなかった。

そして放課後。

これで無かったらいい加減に諦めようと決めて、本を開いたら、

紙は突然現れた。

「うそ!!」

私は紙をじーっと見つめて、文字を確認して、「いつものだ!」と嬉しくて声を上げてしまった。

はっとして慌てて口に手をあてる。

此処は図書館。静かにしなくては。

私は声を上げたいのを我慢しつつ、その紙を持って、絵本のコーナーへ。

そしてまた、いつものように紙に書かれた絵本を読み始めた。

読み終わって、満足な気分に浸っていたら、

ふとあることが浮かんできた。

・・・紙っていつ挟まれたの?

私は今日、休み時間の度に図書館に来て、紙を確認したけれど、一度だって無かった。

挟んでいる人も、見ていない。

・・・そう、そうなんだよ。誰がいつも紙を挟んでるんだろう。

今まで気にはなっていたけれど、重要なことでもないかと、それほど気に留めていなかったんだ。

でも、今、そのことが気になって気になってしょうがない。

司書の先生に聞いたところで分かるわけじゃないだろうし・・・。

あーもう!誰!?

本の妖精サンの仕業!?

私には見えないの!?

ファンタジーの読みすぎかもしれないけど、こんな考えまで浮かんできちゃう。

結局、このモヤモヤを解決するために、

私は翌日から紙の主探しに必死になった。

休み時間の度に図書館に行って、全集をチェックする。

でもいつになったって、紙の主は見つからない、

でも確実に放課後には全集の間に紙が一枚挟まれていた。


そんなことが何日が続いたある日。

私は掃除の時間、ゴミ捨て場に教室のゴミ箱を持って言ったら、

“図書館”と書かれたゴミ箱を持った人とすれ違って、ピンっと来た。

掃除の時間!!見逃してた!!

私は慌ててゴミ箱を片手に図書館へ向かう。

そして、バタバタと図書館に入ったら、全集の前で立ってた人が慌ててコッチを向いた。

「あーッ!」

私は思わず声を出してその人に向かって声を掛けた。

するとその人は、「えっ!!」と驚いた声を出した。

その人の顔は知らない。他のクラスの男の子だった。

でも、そんなことに構わず私はその人に声を掛けた。

「今、紙・・・挟んでた?」

そう言っても、彼はブンブンと顔を横に振る。

「絶対挟んでたでしょ!だって、それしか考えられないもん。」

私がそう言うと、「え・・・っと・・・。」と視線を泳がせた。

「どうして!!

・・・どうして三日間、紙を挟んでくれなかったの?!」

「へ?」

「楽しみにしてたのに!!」

「あ・・・の・・・。」

「ヒドイよ。急にやめちゃうんだもん。」

私が少し怒ってそう言うと、彼は申し訳なさそうに、

「やめたわけじゃなくて・・・学校休んでて・・・。」と言った。

それを聞いて私はビックリ。

慌てて謝った。

「ごめんなさい!・・・そのっ・・・知らなくて・・・。

・・・・・でも、どうしていつもこんなことしてたの?」

「え・・・っと・・・。

図書館で良く見かけてて・・・

楽しそうに本を読んでるから・・・

もっとその顔見てみたくて・・・。

絵本とか読んだらどうなるかなって思って・・・。」

照れてそんな風に言われたら、こっちまで少し照れる。

私は小さな声で「そっか。」といった後、

「・・・もう紙は挟まなくていいよ。」と彼に伝えると、

彼は少し寂しそうな顔をして、

「あ・・・うん。迷惑だった・・・よね。ごめん。」と謝った。

私は慌ててそれを否定する。

「違う!そうじゃなくて・・・今度からは口で教えて。会って話しよう。」

私がそう言って、ニッコリ微笑んだら、

彼も一瞬の内に寂しそうだった顔を笑顔に変えて、コクリと頷いた。



放課後の楽しみは一つ減ったけれど、

違う楽しみが一つ増えた。

一人で本を読むのも楽しいけど、

誰かと一緒に読むのも楽しいよね。きっと。



END







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