【2013】(リョーマin立海)
(※U-17は開催されていない設定)



「さぁ、2013年ももうすぐで終わる。みんなで今年を振り返りながら楽しく過ごそう」

12月末。
学校が冬休みになり丁度部活も休みになったこの日。
全国大会を共に戦ってきた面々は元部長・幸村の自宅に集まっていた。
ちなみに、24日はリョーマの誕生日&クリスマスイヴの為ここにいる全員が集まりファミレスやらカラオケやらを転々としながら盛大にお祝いしたばかりだ。
その時、幸村がリョーマに「年末は俺の家に来ないかい?母の作る料理はかなり美味しいんだ。母も是非とも越前に食べてもらいと言っててね」とコッソリ誘いをかけたのだが。
それをナチュラルに聞いていた柳に「ならば俺も行こう。実は最近料理に懲りはじめてな…知恵や裏技を御教授願いたい」と邪魔をされ、更にその話しを聞いていた他メンバーも次から次へと名乗り出て結局はいつもの顔が集まったというわけだ。
もちろん、邪魔をされてもニコニコ微笑んでいた幸村の背後からはドス黒い物体が見えていたが、リョーマを独り占めさせるわけにはいかない!!と冷や汗をかきながら各々声をあげた。
そんな彼らを落ち着かせたのももちろんリョーマの一声なわけで。

「…それならさ、忘年会、だっけ?みんなでやろうよ」


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という過程を経て現在。
2013年立海大附属男子テニス部の忘年会が開催されているのだった。


「じゃあ…まずは真田。今年を振り返って、どんな1年だった?」
「ふん…全国大会では優勝は出来なかったが大きな収穫もあった。今の自分に満足などせず今後も鍛錬を積んでいく所存だ」
「相変わらずお堅いっスね~!」
「赤也!貴様はいつまで経ってもたるんどるっ!!!」
「イテッッッ」

ゴンッッと強い音が鳴り響く室内。
周りはやれやれ…と溜息交じりに見ている。

「フフッ。お約束も決まった事だし、次は柳だね」
「俺か?そうだな…今年は強豪揃いだったからか各所のデータが随分増えたな。自校他校問わずに。人間は日々進化し続ける生き物だ。来年は今以上に素晴らしいデータが取得出来る確立100%、というところだろうか」
「俺らのデータはだいたい収集出来たのかよぃ?」
「否…まだだ。何せうちには巧妙な詐欺師が居るからな」
「プリッ。俺のデータは取らせんぜよ」

ベッドによしかかりながらお菓子を頬張る丸井が問いかければ、椅子を跨いで座り背もたれに肘をついて意味深な笑みを浮かべる仁王が会話に入る。

「じゃあ次はその詐欺師の相方・柳生はどうだった?」
「はい。個人的には充実した1年でしたね。仁王君との入れ替わりも成功でしたし…全国大会に関しては確かに悔しい気持ちはありますがいい経験をさせて頂きました」
「しかしのぅ…その入れ替え、未だに騙せないヤツが1人だけ居るんじゃが…納得いかん」
「けれど、一瞬で自分だと見抜いてくれるのも嬉しく思いませんか?」
「…ピヨッ」

ペテンコンビの目線はある人物を捕らえているのだが、肝心の本人は丸井から餌付けされている最中で二人の会話は耳に入っていないようだった。

「ほら、次はブン太だよ!越前、このお菓子も食べるかい?」
「ウィッス」
「ちょ、幸村っ!…ったく…あー、今年って言ってもなぁ。改めて考えるってなると分かんねーけど、悔しい思い出も悲しい思い出もこの面子でなら最後には楽しい、いい思い出になるだろぃ♪また来年もシクヨロ!…でいいか?」
「丸井君らしいですね」
「だろぃ♪リョーマ!俺とこれ食おうぜぃ~!」

特にこれといって振り返ったわけではないけれど、いい事言った!の雰囲気で済むのが彼らしさなのだと柳生は微笑んだ。

「次は~…そうだな、赤也。そろそろ痛みとれたんじゃない?」
「痛いっスよ!何回殴られても痛いモンは痛いっスよ!!強めに殴るからずっと痛いっスよ!!」
「それって切原先輩の自業自得じゃないの?強めに殴っても効果ないってどうなんスかね」
「おいこらまて!お前、先輩に対してそんな口の利き方していいと思ってんのか!?」
「赤也。人様の自宅で騒ぐとは非常識極まりないな。もう一度殴られたいように見えるが」
「いやいやいや!とんでもございませんっ!すいませんっしたっっ!!」

良くも悪くも先輩・後輩関係として仲良しな切原とリョーマ。
しかし、その仲がちょっと気に入らない3年生達は何かと切原に対して強く当たるようになっていた。
後輩である切原も可愛がっていないわけではないのだが、やはり可愛がるなら小さくて素直な子が良いわけで。
結局、切原もリョーマを構いたいので悲しいポジションでも楽しく過ごしてきたのだった。
リョーマが来てからはこの流れが当たり前となっていたりする。

「赤也の番はお終いね。さ、仁王、お前はどうだった?」
「んー。それなりの1年、かの。まだまだツメが甘い部分があったから今後の課題じゃき」
「それだけかよぃ?」
「適当にまとめたブンちゃんには言われたくなか。まぁ、ご希望とあらば一晩中でも語っちゃるけど、な?」
「……何で俺に言うんスか?」

幸村と丸井に挟まれて座っていたリョーマはいつの間にか仁王の膝上に移動していた。
というか、一瞬で浚われたのだ。
リョーマを背中から抱き込み腹部に両手を回して耳元で囁く仁王の姿に周囲はギャーギャー騒いでいるのだが、リョーマはというと毎度の事だと諦めがついているのか溜息を吐きながらジト…と恨めしく元凶を睨んでいた。

「…仁王。いい年を迎えたかったら解放したほうが身の為だよ」
「……ハイハイ、仕方ないのぅ」

幸村の言葉が怖いわけではないがここは離したほうが得策か、とリョーマを床に降ろした。

「それじゃあジャッカル、キミはどんな年だった?」
「ぉ、おう……今までで一番熱くなれた年だったな。出来るならまた青学のヤツ等と戦いたいし、他校の持久力があるヤツとも戦ってみたい。それからブン太。“ジャッカルがな!”って言うのはやめてくれ…」
「え?何でだ?面白いだろぃ」
「誰がだよ」
「もちろん俺に決まってるだろぃ♪」

何を言っても無駄だ、とガックリ項垂れるジャッカル。
労わりを込めてで彼の肩をポンと叩く柳がそこには居た…。

「次は越前…と言いたいところだけどやっぱり最後に聞きたいから俺が先に言うよ。俺にとっても今年はいろんな意味でいい年だった。みんなに迷惑をかけてしまったけれど、コートに復帰して自分のテニスが出来るのがどれほど幸せでどれほど嬉しかったか…これからは時間を無駄にせず毎日を充実させていきたいと思ってる。“常勝”が崩されたのもいい経験だしね。立海はもっと強くなる。絶対。それと…越前が来たのは最大にして最高の出来事だね。これは全員同じ意見じゃないかな?…越前、これからも俺ら共々、立海大テニス部をよろしくね」
「……ッス」

幸村の言葉にコクリと頷くリョーマ。
そんなリョーマの頭をいつもの優しい微笑みで撫でる。
信頼し合っている関係に周りもにこやかムードで見守っていた。

「さ、最後は越前だよ?」
「……言わなきゃダメ?こういうの苦手なんスけど…」
「「「ダ・メ!!」」」

全員にツッコまれ小さく息を吐き覚悟を決める。

「…俺、は……、日本に行く事になって、最初は親父の母校である青学に通う話しになってたんだけど…立海大のほうがテニスが強いって知って急遽変更したんス。正直、日本の中学だからってナメてた。だって、ここにはバケモノがたくさんいて倒し甲斐があるでしょ?それに…みんな優しいし…生意気な事言っても可愛がってくれるし……たまにウザいけど。だから、まぁ、こっちにして正解だった、かな?なんてね」

続けるうちに自分の言ってる事がだんだん恥ずかしくなってきたのか、語尾は小声になり眉をハの字にして頬をほんのり紅く染める。
珍しい彼の表情と、照れながらも綴ってくれた言葉にほっこりした一同。
そして全員が『越前リョーマと出会えてよかった』と改めて思った。


「…ねぇ、日本では新しい年になるとハツモウデに行くんでしょ?俺も行ってみたい」
「そうだね。年が明けたらみんなで行こうか」
「越前君、参拝は大勢の人が来るので大混雑が予想されますが大丈夫ですか?」
「俺が手ぇ繋いでてやるかの?」
「仁王に任せたらダメだっ!どこに連れてかれるか分かんねぇぞぃ!」
「防寒対策は万全にせねばな」
「屋台も出ているから越前が楽しめる確率は高いぞ」
「ジャッカル先輩…来年も俺、ポジション昇格しなさそうっスね…」
「このメンバーだ。俺もお前も諦めるしかねぇだろうな…」


こうして彼らの忘年会は続くのであった―――。



終。




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