拍手ありがとうございました!
ここの文字は無事なのでそのままにしておきますね。
続きの結婚漫画ページは削除してしまったのでありません・・・ごめんなさい!
コメントはいつもどおり受け付けております。ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした!
しかし一番ショックなのもミヤマなんだぜ・・・
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目を開けると、自分は暗闇の中にいた。
なんだろう。ここはどこだろう。
見渡すかぎり、真っ暗闇。目を細めて辺りの様子を伺ってみる。
何も見えない。聞こえない。
急に不安になった。おかしいほどに、何かに駆られている。
でも大丈夫、解るはずだ。俺は暗闇に生きる人間だから、絶対解るはずなんだ。
よくよく目を凝らすと、遠くに小さな光が見えた。ぽつんと浮かぶ、あれは、白?
とにかく光に向かって走ってみる。しかし、走っているはずなのに、思うように進まない。
ふわふわふわふわ、ゆっくりと、進むのやら、遠ざかるのやら。
そこで俺は、ああ、これはきっと夢なんだろうなとぼんやり考えた。
やっとのことで光にたどり着くと、それは俺だった。
その銀色の髪が向こうからは光に見えたのだ。
髪の短さからいって、17歳くらいの頃の俺。今よりももっとよく言えば華奢で、悪く言えばみすぼらしい。
半端に伸びた髪と幼さの残る顔立ちから、よく女と間違われた。そのせいで、そういう嫌がらせみたいな任務を毎日のようにこなさなければならなかった。
生きてきた中で、一番惨めだった頃の俺の首には、やはりそういう惨めな痕跡がちらばっていた。
17歳の俺は惚けたみたいに一点を見つめている。泣いてるのか?表情からは何も読み取れない。
俺はこんなにも人形みたいな、息をしているかもわからないような人間だったんだろうか。
俺が見つめる先を、目で追った。たどり着いたのは、赤。
あぁ、これは、そうか。なるほど。
その赤の意味に気付いて息を吸った次の瞬間、周りの景色がぶわっとパズルみたいに組み立てられていった。
ひとつひとつのピースが自分の意志で、すばやく位置についていくようだ。そうして出来上がったのは、あの地下の部屋。薄暗い、地下。ザンザスが長いこと眠っていた部屋だ。17歳の俺が見つめていたのは、一向に自分を見ないザンザスの真っ赤な瞳だった。
この状況を、俺はよく知っている。
周りから見るとこんなにも痛々しかったのか。
これは、氷の中のザンザスに、面会を許された時だ。年に数回あるかないかだった。会える度に俺は必死で、今度こそ目覚めて、俺を見てくれるんじゃないかって期待して、だけど…それはいつも叶わなかった。叶わないと理解した瞬間、俺はたぶんこんなふうに、自分でも知らないうちに、絶望というものを体験して、泣いていたのだ。
やがて17歳の俺はさめざめと泣きながら膝から崩れ落ち、その色のない頬を氷にすり寄せた。
叩いて、引っ掻いて、爪の音が耳に響いて頭がいたい。
その一連の動作をしないと、自分のやるせない気持ちがどうにも納まらないことも知っている。
やがてその爪跡は自分の腕に移って、無数の痣を作るんだ。
それも、痛いほど、知っている。
「やめろ」
たまらなくなって声を出した。
けれど、俺は俺に見向きもしない。
堪えきれない声を時折漏らしながら、ただ泣いている。
この時の俺にとって、世界の全てはザンザスだったのだろう。
誰の言葉にも従順でありながら、誰の言葉にも耳を貸さなかった気がする。体当たりで俺をいつも嗜めてくれて、愛してくれたルッスーリアやディーノにすら、たぶん、あまり目を向けなかった。
「やめろよ、なぁ」
祈るように、もう一度呟く。
でもダメだ。俺には通じない。
「そんなことして、何になるんだよ」
これは欺瞞だ。今、俺の傍にあの人がいてくれているという結果を知っている、現在の俺の欺瞞だ。
でも哀しくて、見ていられない。
地下室は静かで、いささか静かすぎて、幼い俺の嗚咽と、きぃきぃと鳴く爪音だけが、俺の虚しさと哀しみを包み込んでいく。
いつか目の前にいる俺のもとへ、俺と同じようにあの人が帰ってきてくれますように。
あの腕で俺を抱き締めてくれますように。
世界で一番安心できる場所を作ってくれますように。
きぃきぃと未だ鳴り続ける音が、もはや爪の音なのか、胸が軋む音なのか、解らなくなりながら、この悪夢から早く目が覚めてあの人の顔を見れるようにと願って、俺は目を閉じた。
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