街に血が流れていることに何も感じない、そのことに愕然とした。
何も感じないのは、信念の喪失に他ならないと、私は自覚していた。
血を流さぬために権力に取り入り王に助言し、国力を増すための政策も実行した。それでも国土が血に覆われたのはただ、相手の権力と国力に我々が屈しただけ。紛れもなくそれは我々の信じる世界のルールだった。
ああ、認めよう、私は疲労していた。そして自身に幻滅していた。
争いは無限の連鎖だ。血を流した人は復讐しさらなる国力を得て復讐する。資源に余剰があり発展していける環境でならそれはプラスとなりえるが、円熟した環境では最終的に食い潰し合うだけだ。私はここまでの犠牲を払って初めてそれを悟った。
全く、意味が無い。私の志も、争いも、この荒廃した世界にすら。
私は視線を落とす。土と交ざった赤い色は私に張り付き、かつては燃え盛っていた、未練がましく燻ぶる熱をゆっくりと消していった。
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