「刹那の月光を抱きしめて。」 「……どうして」 「どうしてだろうな…」 「…あ」 「もしかして俺の館へ来るつもりだったのか?」 「………」 「ふっ……」 「…ユダ……そんな意地悪な笑い……」 「いや…悪い。俺もお前の所へ行こうとしていたのだ」 「………えっ」 「同じことを考えていたのだなと、思ってな」 「…やはり…あなたは…意地悪です……」 「…シン…顔を上げろ。お前の顔が見たくてこうやって足を運んでいるんだ。 思いがけず、願いが早く叶ったのだからな」 「……ユダっ」 「…頬を染めたお前は…」 「…や、やめてください…は…恥ずかしい……」 「…シン………シン……さぁ、顔を……」 「……はい…」 「今夜もお前と共にいたい…構わないか?」 「………………」 「シン…?」 「……私が何所に行こうとしていたか…知っていて、そんな風に言うなんて… 今夜のあなたはやはり…意地悪です…」 「そうか…?」 「…あなたの言葉に私は……」 「…さぁ、行こう…俺の館のほうが近い…その冷えた身体をあたためてやろう」 「……はい」 ―想いを抱きしめて ぬくもりを、抱きしめて 刹那を共に…
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