薄桜鬼 現代で新婚なパロ設定です。苦手な方はごめんなさい。
お礼は3種類です。
一つの中に二人分のSSSが入っています。(短いです)
<2.こんにちはシリーズ>
~沖田家の場合~
夕飯の買い物を済ませた千鶴は、買い物袋を両手に提げながらマンション前の公園前を通った。公園内では、既に幼稚園や保育園から帰ってきた子供たちが親御さんと共に遊んでいる。
可愛いなあと微笑ましい思いで視線を投げていると、そのうちの一人がてこてこと危なっかしい足取りで公園の入り口へと歩いてきた。まだ小さい男の子だ。どうやら別の子が投げたボールを追いかけてきたようだ。千鶴がボールと拾ってあげると、その子がホッとした様に千鶴に駆けだそうとして足をもつれさせた。びたんと音を立ててアスファルトに転んでしまった男の子は、泣き声こそあげなかったものの、ぽろぽろと涙をこぼした。
千鶴は傍に寄ると屈みこんで男の子を覗き込む。
「大丈夫?」
『大丈夫?』
なんだかデジャヴを感じた。
気付いた母親が男の子の傍までやってくると、男の子は涙を拭って千鶴を見上げた。
「だいじょうぶ」
『だいじょうぶ!』
「うん、えらいね。はい」
『うん、えらいね。はい』
千鶴がボールを手渡すと、男の子はお辞儀をして千鶴に背を向けた。
「ひろってくれて、ありがとう!」
『ありがとう、おにいちゃん』
駆けだしたと思ったら振り返って手を振ってきた男の子に、千鶴も手を振り返す。
昔、同じことがあった。まだ千鶴も一緒にいた人も学生服を着ていた時の話だ。
今日旦那様が帰ってきたときに話すことが一つ増えた。
嬉しいなと、些細なことに喜んで、千鶴はマンションの中へ戻って行った。
了
~斎藤家の場合~
お昼前、掃除機をかけていた千鶴は棚と電話台の間に落ちていた一枚のシールを見つけた。
「なんだろう?」
掃除機のスイッチ切って拾ってみればそれはプリクラだ。映っているのは学生時代に撮った千鶴と斎藤の姿。初めてのデートのときに、千鶴からお願いして撮ってもらった。あの時は夢だったのだ、こうして一緒に写真を撮ること。今では頼めば撮ってくれるだろうけど、難色を示していた学生時代で考えてみればかなり一歩前進したときだった。
懐かしさに拾い上げて、千鶴は見つめる。どうしてこんなところに一枚だけ落ちているのかは解らないが、掃除機で吸ってしまわないで良かったと思う。
初デートは千鶴はすごく緊張してしまって、手も握れなくてずっと真っ赤だったと思う。対する斎藤は普段と変わった様子がないから、千鶴は一人で舞い上がっているようで余計に恥ずかしかった。けれど、後から聞いたら斎藤もそうではなかったということが判明して、なんだか親しみが沸いたのだ。あの無表情の下に隠した緊張は、はぐれまいと差し出された彼の手の温度で解った。千鶴よりずっとずっと、熱かった。
千鶴は電話台の端に立てかけておいたフォトフレームの枠に、拾ったプリクラをテープで貼り付けた。
結婚式の写真と学生服の二人、ただ一つの共通点はおんなじ顔して千鶴が微笑んでいること。
了
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