THANK YOU FOR YOUR CLAPPING!!!!
拍手ありがとうございます! 感謝の気持ちを、やる気に変えて夏乃は今日も執筆頑張ります!!
何かメッセージもありましたらお気軽にどうぞ^^
ただいまお礼は2010年つばたんにおいて夏乃が書きなぐったごった煮よりSSを抜粋してお送りしております。
(全5種)
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【落書きラブレター】
人って大事なことほど忘れがちだと思う。
駆け足で学校へと向かいながら、昨日の自分を後悔する。
一体どうして私はあんなにも大事なことを忘れて帰ってしまったのだろうか。
眠気眼であんなことをしてしまった自分も、それを後で消せばいいなんて放置してしまった自分も、恨めしい。
放課後、最後まで教室に残っていたのは私だ。
ならば、誰よりも早く教室に辿り着けば問題はない、と思う。
いや、思いたい。
教室の片隅の私の机など、誰も意識していないに違いない。
気にも留めることはないだろう。
そう、信じたい。
まだ人の気配がほとんどない校舎内へと足を踏み入れて、駆け足で階段を上った。
そうして教室へと入ったなら、私は安堵の息を漏らした。
「……よかった、まだ誰も来てない……」
電気が消えたままの教室には、人影などない。
心底ほっとした私は、息を整えながら自分の席へと向かった。
これで誰にも気づかれることなく、私の失態は消えてしまうに違いない。
そう思ったところで、背後から扉の開く音がした。
「、」
「……、なに、早いね。おはよ」
「し、椎名君……!」
肩を揺らしながら振り返ると、そこに立っていたのは椎名君だ。
僅かに目を見開いてから肩を竦めて自分の席に向かう彼の姿に、私は驚くほどに動揺してしまった。
「椎名君こそ、早いね」
「ああ、ちょっと確認したいことがあって」
「そ、そうなんだ!」
私は必死で自分を抑えながら、彼に倣って自分の席に荷物を下ろす。
椎名君が今来たところで本当に良かったと思う。
彼よりも早くこの教室についた自分を褒めてやりたい。
此処で私が、不自然に感じられない程度の動作で鞄の中から筆箱を取り出し、そしてそこから消しゴムをつまんで昨日の失態を消してしまえば、それで終わる。
息を吐き出して気持ちを落ち着かせながら、私は脳内でシュミレーションをした。
よし、行ける。
「ねえ、」
けれども、椎名君の声が私の動きを止める。
私はそれに何食わぬ顔で振り返って見せることしか出来ない。
「なに、どうしたの?」
「確認したいことがあるんだけど」
「私に?なに?」
椎名君はまっすぐに此方を向けていた。
私は何気なく自分の手を机へと添える。
彼には見えないと分かっていても、隠したかったのだ。
「それ、本当?」
「え?」
「それ書いたの、お前だろ?」
「――、」
それ、に心当たりがないわけなかった。
彼の目線が、私の手を向いていたからだ。
私の手の下に書かれている私の失態を、どうして彼は知っていると言うのか。
「昨日、部活終わってから忘れ物取りに来た時に見ちゃったんだよね」
「――、あ、え……」
瞬時に顔が赤く染まる。
まさか、彼に見られてしまうだなんて。
一体どういう経緯で椎名君が自分の席ではない私の机に目を向けたのかは分からないけれど、彼がこれを見てしまったと言うことは間違いないのだろう。
なんて答えたらいいか分からない。
私は震えだした自分の手を、そっと見やった。
もしかしたら違うことが書いてあるかもしれない。
私が昨日書いたこととは全く違うことが書いてあって、それで椎名君はそれを見たのかもしれない。
そんな都合のいいことを考えた。
「―――、」
けれど、まさかそんなことがあるはずもなく。
そこには私が昨日、すっかり夢見心地で書いた落書きが残っていた。
“椎名君が好き”
ご丁寧にハートマークまで付けている自分が疎ましい。
目眩がして、もう何処かに消えてしまいたいような、そんな気持ちになった。
「……、え?」
けれど、信じられないことに私はもう一度椎名君を振り返ってしまった。
気づけば、手の震えはおさまって、目眩も消えた。
私はただ目を瞬かせながら椎名君を見やる。
「で、それ書いたのお前なの、違うの、どっち?」
目を細めた椎名君は、とても楽しそうだ。
ああなんてことだ。
私の顔は再度真っ赤に染まる。
恥ずかしい、けれど、消えてしまいたくはない。
今消えてしまうだなんてもったいない。
「わ、私が、書きました……」
「そう、よかった」
私の落書きの下に添えられていた、少し男の子っぽさが感じられる椎名君の字。
“僕も”
この落書き永久保存版、なんて言ったら椎名君は笑いながら悪態を1つ零した。
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落書きにはロマンスが詰まってる。
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