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「ルルーシュ、おにいさま‥?」


呟くナナリーの声は、困惑と歓喜と懐かしさと、その他にも制御しきれない様々な感情が混ざり合って誰が聞いてもわかるほどに震えていた。
目の見えないナナリーは、その分他の機能が敏感になっている。目の前に存在するのは二人分の人の気配だ。ひとつはこの八年間ずっと一緒にいた、ナナリーをあらゆるものから守ってくれた、そしてどれだけ望んでも必死になってもナナリーのちからでは決して幸せをあげることはできない上の兄。けれどもいつだってナナリーが絶望し続けてきた氷のような兄はそこにはなく、ただ涙が溢れそうなほどの幸福だけが兄を包んでいた。ナナリーは兄の隣りに佇むひとに意識を傾ける。盲いた瞳からはぽろぽろと透明な雫が零れ落ちていた。目が見えなくてもわかる、お日様のようにあたたかく優しい空気を纏ったそのひとが静かにこちらに近付いてきて、そっとナナリーの頬を拭う。その仕種は、この八年間ナナリーが、そして誰より兄が求め焦がれ続けていたもうひとりの兄に、ひどくよく似ていた。


「お、お兄様!! お兄様!! ルルーシュおにいさまぁ!!!」


我慢できなくて、目の前にいる存在がまやかしなどではないのだと、都合の良い夢などではないのだと確かめたくて、ナナリーはぎゅうっと勢い良くルルーシュに抱き付いた。ガタンッと大きな音がして、特注品の車椅子がひっくり返る。けれども電動の車椅子が倒れる音よりも、少女の泣き声の方がもっとずっと大きく色彩を増した世界に響いた。









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