目ヂカラ。
一般的に言う目ヂカラとは、女性の目の印象的な様を言う。
しかし、本来はそういった意味ではなく、目が持つ能力の一部を指す。


「やっぱさ、すごい目ヂカラ」

「え?ザックスって私の動体視力分かるの?」

「分かるわけないから、見た目じゃ判断出来ないものだからね、それ。そうじゃなくてさ、目に力あるよなぁって」

「いや、私の目に殺傷能力は……」

「だから違うってば!」


どうして彼女はこう天然なんだろう。
さっきからまったく話が通じてないぞ。
そもそも、彼女がセフィロスと一緒に育ったなんていう環境が悪いんだ。
きっとセフィロスに同じことを言っても、同じような回答が返ってくるんだろうな。
俺が言いたいのはさ、そういうことじゃないわけだ。


「なんかこう、目がパッチリしててさ、人を惹きつける力があるよなって」

「それを目ヂカラっていうの?」

「そうそう。理解してくれた?」

「何となく……」

「あ~……それでもまだ何となくなんだ……」

「私の目には、人を惹きつける力がある……じゃあ、ザックスは?惹きつけられるの?」

「へっ?」


おお、ずいぶんストレートにきたな。
まあもちろん、俺自身がグイグイ惹きつけられるからそう言ったわけなんだけど、その辺りもあんまり通じてはいなかったらしい。
そんな真っ直ぐな目で見つめられると、俺、弱いんだけどなぁ。


「そうだなぁ、俺も惹きつけられるよ!キレイな目で見られると、クラッときちゃう!」

「……眩暈?」

「うん、近いかも」


ほらほら、そんな風に小首傾げて見せちゃったりなんかしちゃってさ、もう俺にどうにかしちゃって欲しいようにしか見えない!


「だぁーっ!もうダメだ!」

「え?」


いきなり抱き寄せて、胸元の頭に頬を擦り寄せると、いい匂いがしてますますクラクラする。
柔らかい髪の感触にずっとこうしていたい衝動に駆られるけど、やっぱり、あの魅力的な瞳が見えないのはもったいない。
肩を掴んで身体を離すと、キョトンとした視線と交わった。


「なぁ、俺と……」

「貴様、何をしている」

「げっ!」

「セフィロス」


何やら背後に黒いものを背負って登場の、通称彼女の『お兄様』は物凄い迫力で。
言葉の先を紡ぐのは、まだ少し早すぎるらしい。



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