「新雪……?」
目の前にある、純白のバラを見ながら平次はぽつりと呟いた。
大輪というわけではなかったけれど、凛とした気品のある花だった。
思わず見惚れてしまうその姿は、誰かを思い起こさせた。
「まんま、やな」
ぽつりと呟いた平次は、思わずニンマリと笑みを浮かべる。
――あいつに、見せてやりたい。
ぼんやりとそんな事を思った平次は、ポケットに突っ込んであった携帯を取り出して、カメラを起動する。
そして、シャッターを押しかけたところで、その手を止めた。
「やめた」
どうせなら、本物を見せてやりたい。
「週末にでも、来る――か」
そんな自分の言葉にうんっと、大きく頷いた。
だが、問題はどうやってここに誘うか、だ。
思わず、うーんと唸り声をあげたけれど、その口元には笑みが浮かんでいた。
|