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ここではヤマシタの勝手な妄想劇場を惜しげもなくあけっぴろげに恥ずかしげもなく公開しています。
現在はとあるマフィアの物語妄想。ただの趣味の塊です。自己満です。かんじゃにえいとはでてきません。たぶん。

登場人物:ばなな男(したらひむら)&ラー麺ズ(こばやしかたぎり)









―Prologue―






頬を滑っていく水滴が、汗なのか血なのかすらわからない。
全身を刺す様な痛みのせいで息があがる。


生ぬるい風。薄暗い廃倉庫。
口内に広がる鉄の匂い。
一つ咳き込むと、ゴポッと口から血が溢れ出る。


また、歯ァ何本かいったな…。
この歳で全部差し歯ってのだけは避けてぇんだけど。


心なしか顔全体が火照って熱い。もしかしてめちゃくちゃ腫れ上がってんじゃねぇか?
触って確認しようにも、もう手なんか使い物にならない。おそらく十指の骨は粉々。人間のそれと判別するのも難しい。
いっそ、切り落としてくれたほうがマシだったかもな。



「…俺、死ぬのか…。」




このままここにいれば、俺はそのうち死ぬだろう。
死ぬのはかまわない。この世界に飛び込んだときから命なんかとうに捨てている。

だけど、この世に未練があるとすれば、それは、



「…あいつに、笑って、欲しかっ……」






身体がふっと軽くなった気がした。
意識が飛ぶ。



あ、今死んだのか。
あっけない人生だったなぁ。








カツン。カツン。カツン。



…これはお迎えの足音か?
死神も靴、履くんだな。


さぁ、焼くなり煮るなり好きにやってくれや。







「いい格好だな、設楽。」







心地のいい低音が脳髄に響いた。
…心地のいい?
いやいや、冗談じゃない。


この世で一番胸くそ悪い声だ。




その声の持ち主に、思いっきりネクタイを引っ張りあげられた。


「いでででっ!」
「このくらいで死ぬかよ。ほら起きろ。」


あれ、本当だ、俺生きてる。


「…何で、お前がここにいんだよ…っ!」
「助けに来たって言ったら?」
「遅ぇよ!見りゃわかんだろ事後だってよ!!」
「うん、悪い。怖くて出られなかった。」
「てんめぇ…いっぺん死んでくるか?」
「死にそうなやつに言われても。」
「はぁー…、俺生きてんのか。」
「むしろ元気なほうだろ。」


身体の重心が浮く。
腕を引っ張って立ち上がらせられた。


「痛って!!バカ!腕折れてんだぞ!!」
「この様子じゃ、今のファミリー抜けられたみたいだな。」
「そうだよ!殺されかけたけどな!」
「設楽。」
「あぁ!?」
「俺と組まないか。」


ニッコリ、と音がしそうなくらいの笑顔でそう言われた。






「………は?」




たとえ地球上にふたりしか残らなくても、こいつとだけは絶対に馴れ合わないだろうと確信していた男にラブコールされてしまった。



やたらと湿度の高い夜。
廃倉庫。
ポケットからひらりと落ちる一枚の写真。






これがすべての始まりだった。












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