彼は彼女を大切にしていて、私がいるのに彼女を見ていて、彼女の前では私が知らない顔をして、結局傷ついて、それでもなにくわない顔をしていつもと同じ顔をするんだ。
・未来-殺生丸-
「……りんちゃんの……明日ね」
身支度をする彼の後ろ姿にそう言えば、一瞬動きが止まり、またすぐに身支度をし始めた。
私は彼の気持ちを知っているから、そんな意地悪なことを言ってみたけれども、そんな彼の後ろ姿を見ていたら、なんだか自分が悪いことを言ったみたいな気がして枕に顔を埋めた。
時とは残酷なもので、あんなに彼を慕っていた女の子は立派な女性になり、彼とは違う人を愛するようになってしまった。
こんなこと誰が想像しただろうか。
彼女は大きくなり、彼を愛し、彼と共に生き、彼との子を産む。と誰もが想像していた。が、結局は未来は違った。
彼はなんて言うだろうか、どういう顔をするだろうか。
彼をずっと見ていた私が目にしたのは、なにくわない顔をして「そうか」と、呟いた彼の姿だった。そして、私が心で描いたのはは、これで彼は心から私を見てくれる。という、ずるく、汚らしい自分の姿だった。
「もう一回……」
もう一度、彼の背中に抱きついて、呟けば彼が振り返る。
これで、私が抱いていた心が晴れやかになる。
私は彼女を憎んではいなかった。妹のように、子供のように愛していた。けれども、羨ましくて……、彼女になりたいとそう切に思っていた。いや、本当は憎んでいたのかもしない。
私が欲しいものをすべて彼女は持っていたのだから。
次の日の晴天に恵まれた昼。
太陽のような彼女は、太陽に愛されているかのように笑いながら式を挙げた。
彼女に懇願された彼は遠くから彼女を見守っていた。
その姿を見て、……私は、彼女になれないことを悟った。
拍手ありがとうございます!!
拍手有り難うございます!!
しかも拍手なのにシリアスですいません。
ヒロイン→殺→りん
というのを、前々から書きたかったので、書けてとても満足してます。
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