隊長と秘書1


 懐かしい映像を見つけた。掃除の際の醍醐味という奴だ。
 思わず手が止まってしまうが仕方ない。何しろ懐かしく、輝かしいあの頃だ。
 
「可愛い時期が、わたしにもあったな」

 そこにあるのは、あいつらと共に戦っていた時間だ。先陣を切る奴らに合わせて、わたしは大火力で支援。ああ、一人で血の海、二人ならば世界を救い、三人揃わば宇宙が滅ぶ。そんな陰口を叩かれたことも、今となっては懐かしい。

「隊ちょ――いえ、母上。また懐かしいものを」
「ああ、わたしの過去さ」

 わたしの手が止まっているのを見咎めてか、我が養子最年長かつ秘書が、背後から覗き込んできた。言いたいことがありそうな顔だった。
 
「……昔は、そのようなピンクの光線を? そんなものを撃っているのは、ついぞ見たことがありませんが」
「バカ。どこを見ている。こっちだこっち」

 こんこんと画面内の一人を指さす。全く、親を見間違えるとは教育を誤ったか。

「ははあ、なるほど。変わりませんね」
「嫌みか? それにそう思うなら、せめて一発で当てろ」
「一撃必当ならず申し訳ない」
「腕が鈍ったか。なら、いつでも練習をつけてやるが」
「ご冗談を」

 顎守防具<キメン>を守りながら引くな、バカ。そんなところを狙わずとも、落とす時は落とす。

「……」
「どうした」
「安心できない頼もしいお言葉です」
「どっちだ」

 また生意気になったものだ。
 ふん。さて。そういえば、こいつもこのところ働き詰めだったな。もう一度休暇をやるのも優しさか。
 
「おい」
「お断りします」
「まだ何も言っていないぞ」
「模擬戦以外の言葉なら聞きます」
「つまらない奴だ。母のストレス解消に付き合う気はないのか」
「ストレス解消で、人を"一回休み"させようなどしないで下さい。断じてNOを提示させて頂きます」
「いつの間にかわたしの娘はサトリになっていたか。人の心を読むとは」
「……冗談で言ったのですが、本当にそうだったのですか」
「ジョークだ」
「でしょうね」

 つまらん奴に育てといった覚えはないというのに。これはますます、考えなければな。
 
「しかし、こちらに戻りますが、母上以外のメンバーの戦い方も実に面白い。特にこの女性は」
「似てるだろう? お前に」
「手前は戦いを好む質ではありませんが……似ていますか?」
「ああ。しかし、お前の方が美人だよ」
「怒りますよ。あり得ないことを言って、人をからかわないで下さい」
「なにを怒ることがある。間違ったことなど一言も言っていない。わたしの子供達は、どいつも宇宙一に決まっている」
「~~~~っ! 失礼しますっ」

 勢いよくドアを閉めすぎだ。耳が痛い。
 にしても……あの照れ屋め。怒ったふりで、母を騙せると思うなよ?


「しかし、こいつらは元気かな」
 全員の集合でしめられた映像記録を指でつつく。
 さて、これはどこに置くか。一考の価値ありだな。



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