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 毎日うだるような暑さに身もだえして、夏休みに入ってもろくに外出できない。
 出ても、市民図書館行って勉強したり、カラオケ行ったり映画館行ったり、室内に限られ。
 プール?学校の授業でもいっぱいいっぱいだったのに行けるわけがない。
 あれは全身の体力をことごとく奪う魔のスポーツだ。行きたいのは山々でも、もし行ったら俺は遊び倒すぞ!はしゃいで泳ぎ倒す、そうすると帰宅後一切の家事はしない!それでも良いなら行ってくる!
 と言ったら母親に普通に首を振られた。
 あんた洗濯物の取り込みは?この季節洗い物溜め込むとあとが悲惨なのよ?
 ……母さんちょっとは手伝ってくれよ。俺の夏休みに貢献してくれよ。
 母ももう少し俺が小さい頃は家事も普通にしていてくれる日もあったのだが、最近はすっかり勘が鈍ったとか言って面倒くさがる。
 ばあちゃんが来る日なら泳ぎだろうが山だろうが徹夜ゲーム宿泊だろうが行けるんだろうな。気まぐれな祖母はこの猛暑で体調を崩したらしくしばらく来ない。
(さすがに心配だな。電話では平気そうな声してたが)
「均ースイカ切ったから食べよー」
「おー」
 団扇で顔に風を送りながらごろごろしていた俺は、間延びした返事を返して身体を起こす。
 夏ってのは、どうにもこうにもだるい季節だ。
 うちは、本当に暑いときか、来客時以外はクーラーを極力入れない。身体を冷やしすぎるとよくないし、あとエコ。まあ扇風機は着けっぱなしだけど。
 母親の切り分けてくれた、明らかに大きさに差別のある、ちょっと歪んだスイカにかぶりつく。
「均ー、母さあ」
「んー」
 母、塩振りすぎだろう。注意するべきか迷ったが、口の中にはスイカの果肉と果汁が。うんうん、よく冷えてうまいな。
「夏の間海外旅行にバカンス行ってくるから、お留守番よろしくね」
「なんと」
 とりあえず短いツッコミが口をついて、改めて母の真顔を見つめる。
「実はお母さん、仁嶋さんと不倫の関係になって二人で旅行に行くの」
「仁嶋さんおばちゃんじゃねえか。仕事なんだろ、そう言えよ」
 これがいつも通りの突発的、奔放な夏休みリゾートだったら俺の血管もつながっていたか怪しいが、仕事ならば仕方がない。
「身体に気をつけて」
 当たり前にそう言う俺に、母は少しらしくない苦笑を口元にのぼらせる。


   


 









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