私きみが好きです。 笑顔が可愛いとことか。スポーツが得意なとことか。結構かっこいいクセにおちゃらけてるとことか。謙虚なとことか。優しいとことか。 しっかりしてるように見えて意外とおっちょこちょいなとことか。甘くて優しい声とか。 「あ。」 彼の声が聞こえて私は振り返る。 あー。と少し困った顔をするきみは、とても可愛いと思う。 「どうしたの?」 「指切った」 人差し指の第一関節辺りからじわりと滲む赤と、彼を傷つけた原因であろう憎き(もとい、羨ましい)紙切れを見せられた。 ほら、やっぱり少しおっちょこちょいでしょう? 「大丈夫?」 「うん」 「血出てるよ」 「ちょっとだし」 ちょっと待って。絆創膏あるよ。 そう言いたくて、私は口を開ける。 だけど言えなくて、私は口を閉じる。 どうしてでしょう。 どうしてきみが相手だと、こんなに簡単なことが言えなくなるんでしょう。 「なぁ」 彼は立ち上がって、少し離れたところにいる人のところまで駆けて行った。 それは彼と仲のいい、可愛い女の子。 「絆創膏持ってる?」 彼がそう言うと、彼女は笑って頷いて可愛いピンクの化粧ポーチのチャックを開けた。 そこから絆創膏を取り出すと、はい。と彼に手渡す。 彼は笑顔で「ありがとう」と言った。 私きみが好きです。 紙で指を切っちゃうような少しおっちょこちょいなとことか、その可愛い笑顔とか、「ありがとう」って言う甘い優しい声とか。 大好きです。 (だけどこんなに切なくなるのはどうしてですか) 私の化粧ポーチの中にはお気に入りのピンクのグロスと、いつまで待っても永遠に出番がくることはないだろう、彼の為に用意された絆創膏。 いっそ捨ててしまった方が楽ですか? だけどどうしても手放せないのです。 私きみが好き。 私きみが好きなの。 *** 好きな男の子が自分以外の女の子に絆創膏ちょうだい。って言ってるとすごい切なくないですか? 絆創膏って女の子の象徴みたいで、それをちょうだいって言うってことはその子は女の子として見られてるんだろうな〜と。思ったのですよ。 あ、「きみ」って名前じゃないですよ?(笑) |
|