春になった。
出会いと別れの季節だ。

僕は何とか大学生になれたものの、なんとなく物足りなくて仕方がない。
長くて短い君との1年の差は、同じ高校という小さな空間にいる間だけは近くに感じられたのに。
こうして卒業してしまうと、一気に遠くなってしまう。

学年が違えば教室の階も違う。
なのに僕はいつも君の声と姿が気になって仕方がなかった。
同じ学年、同じクラス、そうだったらどんなに楽しいだろうと思う度、僕は勢いを付けて自転車で坂道を走り降りた。
そうやっていつもよりスピードを上げて風を切って走っていても、参考書を開いていても考えるのは君のことばかり。

だめだな、僕は。

こんなに君を好きなのに、はっきりと口に出来ない自分がもどかしい。
卒業式の熱に浮かされて君に告白しておけばよかった。
だけどそんなのはどこか嫌だったんだ。
なんだか周りに流されているみたいで。

だけど1年後必ず僕は君を攫いに行くよ。
柄にもない僕の我が儘だけど、もっと君の近くでいたいから。


「もしもし、紺野だけど。今度の日曜日空いてるかな?」



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