拍手押してくださってありがとうございましたvvv

珍しく絶チル以外の拍手です。
モノクロ本編序章と終章、30のお題の『Cry for the moon.』に絡んだお話。
えと、元ネタである所の『アミューズメント・パーティ』(30のお題の所にリンクあります)の1年後くらいでしょうか。
ナグが雪崩山家に居候して、で……って話。

 


 


「あれ、今日出かけるって言ってなかった?」
 部屋にしている屋根裏から降りて階下に向かおうとしたあたしの目に、人がいないときはしまっているはずの扉が開いていた。
 気になって覗いたら、お母さまが『今日出かけますけど勇次さんは夕飯どうしますか?』と問われた際に『午後は出かけるから夕飯はいらない』と言っていた人物の後ろ姿が見えた。
「あー、あれ? 山崎さんが急に熱を出したとかで、キャンセルされた」
 ごそごそと本棚から何かを取り出しながら、こちらを見ようとせずに問いに答えてくれた。
 確かに今日は講義がない、って聞いてたから飯島さんにキャンセルされたら出かけなくていいってのは判るのだけど。どちらかというと自宅に殆ど帰らない彼の行動パターンを考えると珍しいことこの上ない。
「珍しいのね。あなただったらそれこそセレファイス行って名東さんたちとつるんでもいいだろうし、藻間さんたちのところに遊びに行ってもよかったんじゃないの?」
 麗子さんともデートできるでしょうに、という言葉は飲み込んだ。……だって、言いたくない。
「今日はなんかみんな都合悪くてさ。だったら帰ってきた方がいいじゃん、と思って」
「ふぅーん……麗子さん、も?」
 口にしたくはなかったけど聞かないのはフェアじゃないと考え直して問いかけたら、その不機嫌な色が口調にでてしまっていたのか、彼はこちらをくるりと向いた。軽く笑いながら。
「ナグって、おかしいのな。聞きたくなけりゃ、聞かない方がいいことじゃないか? ──ああ、麗子は今日はE研の会合とやらで夜まで広樹たちと話し合いだとよ。だから本当に暇だったんだって」
「……だって……」
 あたしは言い淀み、俯いてしまう。自分の立場を判っているからこそ、あえてそこには踏み込みたくない。
 この状況を麗子さんに知られるのが怖いけど、けれどこちらからばらしてしまってこの関係を終わらせてしまった方がいいのかも、と自棄のように思ってしまう自分もいる。
 ふ、とすぐ前に人の気配がしたかと思うと、わしゃわしゃと髪の毛をかき回された。ついで、ぎゅ、と頭を抱えられる。
「まあとりあえずさ、今日は一人で寂しくお留守番なナグのために早く帰ってきた、ってことでいいだろ?」
「……なにそれ。あたしが寂しがってると思ってた?」
 彼を見上げ、目を細めながら問いかける。
「一人で留守番が寂しい、とかじゃなくてさ、過去のこととかイグのこととか……それこそ、今の関係とかさ。寂しいんじゃないか、とはいつも考えてる」
 胸が、締め付けられる。この人はあたしの心の奥の寂しさを判ってるんだ、と気づかされて泣きそうになる。
 だからこそこうしてあたしに付き合ってくれているんだ……そう考えたら胸が詰まって涙が込み上げてきた。
 泣くわけにはいかない。これ以上、この人に自分の弱さを見せちゃ、いけない。
「さすが、ナンパな雪崩山勇次くんね。女心が判ってるじゃない。だったら、今日は思いきり、楽しいことしてね? せっかく帰ってきたんだから」
 わざと明るく言いながら、あたしはぎゅうっと彼に抱きついた。


 

ナグはですね、雪崩山がどうして今自分に優しいか判っちゃっているんです。
同情というか同類というか。 そういう理由でそばにいてくれているんだ、ってこと。
どっちにしても麗子さんにはかなわないんだ、ってことも判ってるんです。
でもそれでも彼の傍にいたい。
甘えと同情の関係。恋愛感情は実はあまりないんじゃないかな。
でも結局……ねえ<『魔龍大秘境学園Dragon Revive』につづく、と。
楽さんの小説は恋愛関係を想像したり妄想したりするにはもってこいの話が多くて大好きですv




押していただいてありがとうございましたv
お名前
メッセージ
あと1000文字。お名前は未記入可。