▼拍手 青祓



「兄さん、誕生日おめでとう。それと、はい、メリークリスマス」
「え?」

聖十字学園に入って初めてのクリスマス。
クリスマスプレゼントと、誕生日プレゼントを、初めてその日別々に貰った。

「雪男、これ…」
「ん?あぁ…ほら前にさ、クリスマスケーキと誕生日ケーキは別だって知ったじゃない?だから、今回からはプレゼントも分けてみたんだ」

にこっと微笑む雪男。
燐は手渡された二つの紙袋を交互に見やった。

「俺…何も用意してない」
「いいよ、別に。最初から期待してないしね」
「んだと、てめ…」
「だって毎年のことでしょ?兄さん、自分の誕生日が僕の誕生日だって忘れちゃってるし」
「ば、馬鹿にしてんのか!忘れてねーよ」
「そ?」

へぇ、それは初耳だな。
なんて言って雪男は席に腰掛けた。
毎年、雪男は律儀に燐にプレゼントを渡す。
けれど燐からプレゼントを貰った記憶は余りない。

(脳みそからっぽだもんな、うちの馬鹿兄は)

仕方ないと最早諦めの粋に達している。
別にプレゼントをもらえなくても、今時分の年になれば寂しいということもない。

「それはそれとして、開けてみたら?」
「お、おう!」

促されるまま、燐はどこか嬉しそうに紙袋を破った。
そして中身を見て「うおお」と嬉しそうな声。

「マジで!?これこの前から欲しかったゲームじゃん!!」

そこにあったのは、数ヶ月前から燐が「欲しい」と言っていたポータブルゲームのソフト。

大勇者の果て無き冒険エピソード2、だ。

「マジで!?いいの!?」
「いいけど、代わりにちゃんと勉強もしてよね?」
「やりー!!ちゃんとやるやる~!!」

なんて口先だけだとは知ってる。
本当は甘やかすのもよくないと判ってる。
でも。

(兄さんには、自由がない)

監視の目もひときわ最近厳しくなった。
燐が一人でどこかへ出掛けることはほとんど赦されていない。
必ず誰かが監視しなくてはならない空間。
それは息が詰まるものだろう。
だから。
(少しくらいはいいよね)

これくらいはしてやってもいいだろうと、少しの兄馬鹿精神が顔を覗かせた。
目の前ではしゃぐ兄を見ながら、雪男はくすりと微笑む。
これが本当にあの恐ろしい魔神の落胤だというのだから、驚いてしまう。

(まったく、子供なんだから、兄さんは)

そう思って目を細めれば、もう一つの紙袋の中身を見て更に興奮する燐が居て。

「すっげぇ!!こっちは前から見たかった映画のチケットじゃん!雪男、お前すげぇな!」
「兄さん、さっきからすげぇしか言ってないよ」

クスクスと微笑めば少し恥ずかしそうに頬を赤らめる燐。
ムッとしながらもモジモジと恥ずかしそうに尻尾を揺らし

「性格悪ィぞ、ほくろ眼鏡…っ…でも、その…さんきゅーな」
「ふふ、どういたしまして」

思わず更に笑みが零れてしまって、雪男は口元を手で押えてしまう。
(まったく、本当…敵わないなぁ)

この人には。
無意識なのだろうが、雪男の心を酷くかき乱してくる。

「雪男」
「ん?」
「そ、その…お、お礼…だけど、さ」
「別にいいよ、兄さん何も買えないだ…」

チュッ。

「…ぇ?」
「こ、これで勘弁しろよ!」

なんて、言ってそっぽを向いた兄の腕を掴んで。
(やるならさ)

彼はお返しを貰うことにした。

「頬チューとか、小学生かよ」
「ぇ、あ…ぅ、ん…ッ」

兄さん、って言う。
甘くて美味しい、お返しを…






END


▼ラブる二人をクリスマスネタで書きたかったんだ!!



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
お名前
メッセージ
あと1000文字。お名前は未記入可。